6-2
エイヴァは何も問題はないと上に報告してくれるらしい。基地で雇われるだけあってなかなかの切れ者だった。
次はエイヴァと同じく、メトセラの子であるケンと顔を合わせなければならない。というタイミングで脳波通信が入る。ジョーからだった。
「どうだった?」
「完璧だ。あとは検査だけだ」
「悪いところはしっかり直してもらえよ」
それで本当に修理してもらえるならば助かる話だが、まず現段階の技術力では私の身体構造もろくに分かっていない。私も理解していないのだが。
ケンのもとへ行くと、はじめから話でもするつもりだったかのように検査が始まった。
「エイヴァはどうだったか?」
「知り合いか?」
血液を抜かれながらの質問に質問で返す。ケンは相変わらず血液中の成分にしか関心の無い様子で
「延命処置を受けた者だけが集うコミュニティがあってな。歳が近いのもあって一定の交流はしている」
さながら「メトセラの子ら」だ。なんて言ってしまって良いのか、判断に迷うところだが。
「どうして延命計画に当時から見ても二世紀以上前の作品名がとられたのか、なんか理解した気がするよ。
似た者同士が集うって分かってたんだ。そしていずれ宇宙に行くとも」
不思議なことに、ケンが少し笑った気がした。人間の前ではこの態度なのかもしれないが、私には不愛想を貫き通していたのに。
「今日はよく喋るんだな」
ケンはハッとしたように仏頂面を作り直し
「お前がいつから生きてるか知らん生き物なのを理由に組織から排除されるなら、次は俺たちだ。こっちも苦労してんだよ、人間と寄りそい生きるのに」
最近の権力者だと敢えて寿命の人間のままを選ぶ人が多い。理由は簡単だ。私もあなた達と同じ存在ですよ、と人口の九割以上を占める寿命の人間たちにアピールするためだ。
また、メトセラの子ら計画に参加した人は寄付や募金など人々を援助するような行動をとる者もいる。永遠とも言える時間を手に入れたところで、寿命に捕らわれ続けなけえればならない。
「で、エイヴァはどうだったか?」
沈黙を察知してか、ケンが最初の質問を繰り返す。
「元気そうだったぞ。良いカウンセラーだ」
ああそう、とケンは関心が無い素振りで返事をする。よく考えてみると、ケンが私と目を合わせたことなんてないかもしれない。
「苛立つくらいに異常はない。仕事が増えるから、二度とぼうっとするんじゃねえぞ」
ケンはどこか安堵しているようにも感じられた。
星々の中へ 燈栄二 @EIji_Tou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。星々の中への最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます