第6話

 伯母さんに礼を言い、介護施設を後にした私たちは、実家の裏にある先祖の墓に墓参りに行った。

 貴雄さんが私たちを降ろして、車を実家に置きに行くと、私は娘と手を繋いで緩やかな坂を上った。

ふと、目の前に紋白蝶が飛んでくると、まるで誘うように奥都城の石に止まった。

「凄い。案内してくれた」

そこは正に、私たちの先祖の墓だった。

「ここら辺の家はみんな神道で、亡くなったら土葬して木の杭を立てるの。その杭が朽ちて何処に埋めたのか分からなくなる頃、土に還ってそれでおしまい。だから石の墓はいらないって」

「石のお墓立ってるよ」

「今は火葬だからね。でも、その考え方が好きだった」

娘と二人、手を合わせる。

 父の死の後、震災があって、来れなくなって……

常磐線が復旧して、母が死んで、導かれるように、私たちはここへやってきた。


 帰りの電車まで、貴雄さんは二ツ島に連れて行ってくれた。ちょうど引き潮で陸続きとなり、二ツ島は触れるようになっていた。昔は木々が生い茂っていたけれど、震災で崩れ落ち、今は岩だけになった二ツ島。

 娘と二人、そっと二ツ島に触れる。磯の香りに包まれ、湿った岩肌の感触を確かめる。

 もしかしたら、父や、志津子さんも願ったかもしれない。三つの願いを。

 そのうち、どの願いが叶い、どれが叶わなかったのか。私には分からない。

 でも、私の一つの願いは、必ず叶うことを、私は知っている。

「やっぱり、お姉さんに会いたい?」

娘が聞いた。

「たぶん、もう会ってる」

「どういうこと?」

娘が眉間に皺をよせて、しかめっ面をした。

「七夕の街に帰ったら、教えてあげる」

私は笑顔で言った。

 不貞腐れた娘の手を握り、私は歩きだす。


さあ、帰ろう。

多くの人の願いを集めて輝く、七夕の街へ。

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七夕の街 じーく @Siegfried1111

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