第4話 これからのこと
フレイアを助けたあとは家まで帰ってきた。
これからの行動だがとりあえず本館の方に忍び込んでみようと思う。
へーロとビルティの行方を探るためだ。
俺の父親は腐ってもこの2人のパーティメンバーだ。
あの二人の事についてなにか分かるかもしれない。
(なにか分かればいいけどな。雲を掴むような話かもしれないけど)
ちなみに今日忍び込むことにしたのには理由がある。
俺みたいな忌み子は本来本館への立ち入りを禁止されているから。入ろうとした瞬間基本は門前払い。
本館に立ち入るにはこうして父親が不在の時くらいしかない。
「でも肝心のフレイアがいないとなるとパーティーは中止だろうな」
父親とジョージは早めに家に帰ってくるはずだ。
本来はもっと時間的な余裕があったはずだが、こればかりは仕方ない。
俺がチャチャッと仕事を済ませればいいだけの話
というわけで本館の中に忍び込んだ。
(さすがに俺のいる旧館とは比較にならないほど綺麗だな)
本来の予定ではパーティは二日間にわたって行われる。
本館勤務のメイド達には休暇が与えられているため現状の本館は無人のはずだ。
つまり姿を隠すことなく歩くことも可能のはずなんだけど。
(なんとなく人の気配がするんだよな)
微かな音がどこからか聞こえてくるんだよな。
これはなんだろう?
水の音だろうか?
(とりあえず見に行ってみるか)
誰もいなければそれでいいし、誰かいるのであれば注意すればいい。
確認すべき場所は目的地の途中にあるし、ついでというやつだ。
音のなる方へ向かうとかすかにだけど、その部屋の中から光が漏れていた。
(やっぱり誰かいるのか)
扉に耳を当ててみると、ガチャガチャガチャと食器と食器が当たるような音がしていた。
(こんな夜中まで洗い物だなんて、かわいそうにな)
そう思いながら俺はハリントが所有してる書斎の方に歩いていった。
すんなりと扉は開き中に入ることが出来た。
(小さい頃に何回か入ったことがあるが、手紙とかは机の引き出しに保管していたな)
記憶を頼りに机を漁ってみる。
すると目当てのものはすぐに見つかった。
「ビルティの日記帳か」
ビルティは浮気を吐いてから急いで家を出ていった。
そのときに荷物の整理などは出来なかったはずだ。
そのため日記はこの家に置いていったのだろう。
そして、ハリントはその日記を回収してここに隠していたのだろう。
「こんなもん保管してるなんてキショ、いや。几帳面だな」
とにかくこいつがキショ(ヴヴン、咳払い)、几帳面で助かった。
パラパラと高速でページをめくり中身を見る。
ビルティの心情なんかが書かれていた。
「なるほど。托卵がバレた場合初めからハリントのことはそのうち切る予定だったんだな」
ハリントと別れてへーロと共に過ごす未来の予定なんかも書かれてある。
「いいもの見つけちゃった。これ貰ってくぜ?変態」
ハリントの机にそう言い残して書斎を出ていくことにした。
本館を出るために通りがかるのは例の明かりの部屋。
中からは相変わらずガチャガチャと食器洗いの音。
(一応少しだけ様子を見ていくか。実は泥棒でしたーみたいなパターンもなくはない)
扉を開けた。
そこは食堂となっており、音が聞こえるのは併設されたキッチンの方から。
キッチンに向かってみると、メイドの女の子が1人で洗い物をしていた。
「今本館のメイドは全員休暇と聞いていたけど?」
「は、はうあっ!」
驚いてた。
手が滑って皿を落としてた。
パリーン。
皿が割れる。
「あっ」
俺の事を見つめてきた。
「ご、ごめんなさい!このことは死んでお詫びを!!!」
「待て待て。気にするなって。それから死ぬ必要もない」
ペコペコと頭を下げる女の子を止める。
「あ、あなたは?」
「この敷地で飼われてる哀れな灰まみれさ。ここで勤務してるなら知ってるんじゃないか?【灰まみれのシン】」
割れた食器に手を向けて魔法を使う。
【時戻し】
食器は元通りに戻る。
「あ、あれ?魔法は使えないって大旦那様は仰ってましたけど」
「メリットがないからあいつの前で見せてないだけさ。ある程度は使える」
皿を拾って軽く洗うと本来の置き場所へ。
そして大量に積まれた皿にも手を出していく。
「ぼさっと見てないで手伝ってよ。もともと君の仕事だろ?」
「あ、ご、ごめんなさい。あ、ありがとうございます!」
女の子と協力して皿洗いを進めていった。
更に途中から俺の胸ポケットからネズミが出てくる。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅー!」
「ね、ネズミ?!いったいどこから?!退治しないと!」
ネズミを追い払おうとしてた女の子。
「それを言うなら初めから俺のことも追い払うべきだったんじゃない?今からでも出ていこうか?」
俺は性格悪いと思う。
こう聞いてみるとメイドは言葉に詰まってた。
「うぅ、困りますよぉ」
ネズミは洗った皿の乾拭きをしてくれていた。
出てきたのは俺たちの仕事を手伝うためだったのだ。
そのことは女の子も分かったようだ。
「よし、今日はなにも見なかったことにさせていただきます。なので手伝ってくださいぃ〜」
・
・
・
皿洗いが終わった。
「ありがとうございました。灰まみれさん。ネズミさんもごめんなさい、退治しようとして」
ペコペコと頭を下げてくる。
「ちゅっ、ちゅっ」
ネズミはふんぞり返って許しているようだった。
俺も「いいって」と答えて。
「じゃあね」
メイドとも別れて本館を出ることにした。
本当は手伝うつもりなんてなかったけど、困ってそうな人を見捨てることはなかなか出来ない。
「つくづくお人好しだよな、俺も」
まぁでもそんな自分は嫌いではない。
なにより他人にいい事をしたら、いずれは自分に返ってくると俺は信じてる。
情けは人の為ならず、俺のためである。
旧館に戻りビルディの日記でもじっくり見てみようと思っていたのだが、その時だった。
ガンガンガン!
旧館の扉が激しく叩かれた。
「なんだ、この深夜に。迷惑な奴だ」
玄関の扉を開けるとそこにいたのはハリント。
「パーティが中止となっていた。」
「(やはりか)それで?なに?俺に八つ当たりに来たか?あいにく俺は忙しい。八つ当たりなら他をあたるんだな」
ふんって鼻で笑うとハリントはこう言った。
「相変わらず生意気な奴だな」
「生意気なだけが取り柄なもんで。俺と口喧嘩しても平行線なの、そろそろ理解した方がいいよ」
その言葉にはハリントは何も答えなかった。
そして次の話題へと入っていく。
「ユーサリスが次のパーティの日程をすぐに決めてくれてな」
「早いね」
「次のパーティ、何故かは分からないが身分の制限が緩和されている。つまりお前を連れて行っても問題ないわけだ」
「まさか、俺を連れていくつもり?」
「もちろん。貴様をジョージのかませ犬にする。ユーサリスの娘の前でジョージの優秀さを見せつけたくてな」
「俺がただ黙って噛まれるのを待つだけの犬になるとでも?」
「とうぜんだ。貴様には魔法が使えん。本気を出したジョージの前では手も足もでん!ふーはっはっはっは!今までのことはジョージの慈悲だと分かったな?!」
高笑いしてハリントは去っていった。
まぁ、俺が魔法を使えることを使えることはまだ秘密でいいか。
切り札っていうのは多ければ多いほどいい。
自室に戻りビルティの日記に目を通す。
「さてと、結局ユーサリスの家には向かうことになりそうだが、ビルティとへーロの足取りはどうなってるのやら」
日記に目を通して分かったことがある。
「なるほどな」
奴らふたりは性格や人間性は終わってるけど無能では無い。
普通に優秀な部類。
「ふたりとも今は上位職についたか」
となると、少なくとも今の俺の身分では会うことすら厳しい。顔面を殴ることなんて夢のまた夢。
「俺がフレイアと婚約を結ぶのは悪い話ではないか」
俺の目的のためだけに婚約を結ぶのは少し申し訳ないが、目的を達成することを考えたら悪い選択ではない。
とりあえず次のパーティには俺も向かってみようか。
結果的にハリントの言う通りに動くようで少しシャクだが仕方ない。これが最適解な気がするし
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