誰にも愛されなかった忌み子ですけどチャンスが巡ってきたので成り上がってクズども全員地獄に落とすことにしました。「許して?許すわけねぇだろカス、地獄に落ちて一生惨めに苦しんでろ」

にこん

第1話 忌み子

「お前はほんと無能……」


話の途中ですまない。


俺は目の前の男をぶん殴った。


男の体が宙を舞う。


男の体はやがて尻から地に落ちる。

ちなみにこいつは俺の父親である。(とは言え俺はこいつを父とは認めていないけど)


「ゴミがっ!私に歯向かいおって。誰の金で生活できているか分かっているんだろうなぁ」


口元を歪めて言ってやる。


「そんなに嫌なら俺を捨てればいいのに(俺の事を捨てられない理由は知っているから捨てられないだろうけど、だからこいつが出来るのはせいぜいこうした俺への嫌がらせとか暴言くらいのものだ。だけど俺がそんな罵倒を黙って浴びる理由もない)」


男の顔に衝撃がはしった。


「おのれ……」

「お互い事情があるのは同じだろう?」

「くっ……」

「そんなに俺が嫌なら俺に絡んでくるなよ。あんたが俺の面倒を見るのももうそろそろ終わるんだからさ」


俺の今の年齢が14才。

この世界ではだいたい15才になると家を出るか、家督を継ぐか、その他いろいろ、それぞれの道を歩き始めることになる。

つまり俺も残すところ1年でこの男とはおさらばできる。


「残り1年、お互い干渉なしで過ごせばいいだけの話だろ?」


男はギリッと歯を食いしばる。

悔しそうな顔。

立ち上がった。


「ほんとに生意気なガキだ。無能の分際で人を小馬鹿にするような目もあの男にそっくりだな!」


俺はやれやれと首を横に振った。


「人を小馬鹿にしてるんじゃない、あんたを小馬鹿にしてるんだよ。普通の人にはこんな目を向けないさ」

「この無能が!未だに魔法のひとつも満足にできない分際で!」


すべての悪口を無視してから、男に要件を聞くことにした。


「それで、今日はなんの用事で?」

「今からユーサリスの家へ行くつもりでな。息子を連れて」

「そう、行ってらっしゃい」


男はバケツを乱暴に俺の前に置いた。

中には腐りかけのパンとか。

他にも消費期限大丈夫か?って色をした食品の数々。


男はそれを見てニヤリとほくそ笑む。


「今日の餌だ。たんまりと食えよシン。それから私たちが戻るまで旧館の清掃をしっかりしておくように!」

「へい」

「このぉ……舐めおって」

「早く行かなくていいの?ユーサリスを待たせる訳には行かないでしょ?」

「はっ、そうだな!掃除はしっかりしておけよ、この忌み子の灰まみれが!」


男は立ち去っていった。


視線を後ろにあった建物にやる。


今俺がいるのは【アイザリック】家の旧館。

アイザリック家というのは俺が生まれた家の名前である。


当主の名前はハリント・アイザリック。貴族であり、伯爵だったともう。

形式上は俺の父親にあたる人物。

過去には冒険者をやっており、そのときは聖者というジョブをやっていたそうだ。


(それにしてもまさかこんな複雑な生まれになるとはな)


軽く自分のことを思い出す。

俺にはかつて前世があった。

地球の日本という国で生まれ育った前世。

俺はいわゆるブラックでこき使われて過労死した。

そして生まれ変わったのがこの異世界ディスベルという世界だった。


先に言っておくけど俺に関係のある大人はクソしかいない。


俺は前世で培ったクソ人間判断能力で生まれて早々に察してしまった。


(あ、こいつら全員クソ野郎だわって)


まず俺の実の両親だが父親は剣士のへーロという男。こいつは2番目くらいのクズ。(ちなみにハリント・アイザリックに関しては3番目くらい。まだマシな方であり同情してもいいくらい)


そして、栄えあるベストオブクソに選ばれたのは俺の実の母親。

ビルティという女だ。


こいつら3人は元々同じ冒険者パーティに所属していたのだが、男2人、女ひとりという歪んだ構成で問題が起きないわけもなかった。


まずハリントとビルティが結婚したのだが、実はビルティはハリントの金目的に結婚しただけだった。

裏ではへーロと浮気していて、へーロの子をさずかっていたのだ。

もちろんその子供というのが俺だ。


初めは浮気に気付かなかったハリントだけど、俺が5歳くらいまで成長すると気付いた。

自分と俺の顔が全く似ていないことに。

血縁関係を鑑定したところビルティが今までの事をすべて吐いた。


ビルティは逆切れをして蒸発。

今どこでなにをしているのか俺は知らない。


そして現在。

ハリントがイヤイヤ俺を育てているというのが現状。

もちろんハリントが俺なんかを愛せるはずがなく、生かさず殺さずの子育てを受けていた。


つまり、俺は誰からも誕生を祝われないし存在を祝福されない忌み子である。


ここまでの経緯を見ればハリントに同情したくもなるんだけど……。

俺が受けた数々の仕打ちを思い出せば同情はやっぱりしません。(覚えとけよカス)


「さて、とりあえず旧館の掃除するか」


この旧館は今日から俺の家になるからしっかりと掃除しないといけない。

モップとほうきとチリトリ持って歩き出そうとしたら。


「ちゅちゅちゅーっ!」


俺の脇をネズミが走ってた。


(この旧館長いこと放置されてたからネズミくらいいるか)


床に放置してた食事の入ったバケツの中にネズミが入っていった。

そしてパンとかの食料を盗んでった。


(まぁ、別にいいけど)


もともとあんなもの食べるつもり無かったし。

とりあえず掃除にでも取り掛かろう。


「よっと」


窓を開ける。

ぶわっとホコリが舞った。

ホコリがすごくて咳が出る。


ホコリが頭の上に積もっていた。


俺はいつもこんな仕事ばかりやらされてるせいでいつもホコリを被ってる。顔もすぐに汚れる。

それで着いたあだ名が【灰まみれのシン】。


今度は床に目をやった。


床の方もすごい汚れだ。


床掃除に取り掛かる。


「ちゅっ、ちゅっ」


ネズミが俺の近くに来た。

さっきみたいに走っていなかった。


ネズミを見ているとソローっとバケツの方に近寄って指をさす。


「ちゅー?」


どうやらバケツの中の食料が欲しいようだ。


「ほら」


バケツの中から食料を出してネズミにあげた。


「ちゅーっ!!!」


がっつき始めた。

この旧館じゃ大した食料も手に入らないだろうし、ご馳走なのかも。


(俺から見たらゴミにしか見えないけど)


いつも与えられる食料はこんなゴミ同然のもので、毎日捨ててる。

そんなゴミで喜んでくれてるようなら良かった。


おいしそうに食べるネズミを見ていると


「ん?」


「ちゅー」

「ちゅちゅー」

「ちゅっちゅー」


ぞろぞろとネズミの大群が群がってきた。

全員でバケツの中を漁り始める。


すぐに中身がなくなった。


(よっぽど、腹でも減ってたようだな)


まぁ、これで俺に用はなくなったことだろう。

ネズミたちも元いた場所に戻るだろう。

そう思いながら見ていたら。


「ちゅちゅっ!」

「ちゅっちゅ」


ネズミたちは床に落ちてたゴミとかを拾い始めた。


(食事のお礼に手伝ってくれるって訳か)


いいお手伝いさんを手に入れたな。

この調子だとすぐに掃除も終わりそうだ。

その前に軽く挨拶をしておこう。


「ま、嫌われ者同士仲良くしようよ。俺見ての通り味方がいないんだよ」


「ちゅっ!」

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