『柔』から『剛』へ、突然変転する恐怖

 怖さとは、『死角』から襲ってくるものなのだと改めて認識しました。

 作中に出てくる不気味な同級生の「みよちゃん」。彼女とその母親の雰囲気ま行動の数々はとても薄気味悪く、近づけは何か悪いことが起きそうな雰囲気があります。

 よく、格闘技などだと『柔』と『剛』という区分がなされます。
 柔道や合気道など相手の力を利用するのが『柔』、空手やボクシングなど鍛え抜いた自分自身の肉体で闘うのが『剛』。

 こういう柔と剛の区分はホラーにも当てはまると言えます。
 貞子や伽耶子のように呪いとか目に見えない力でじわじわじつとりと獲物を殺すのが柔ならば、ジェイソンなどのように物理で攻めてくるのが剛。

 どちらの場合でも、基本は慣れてしまうと「次は大体こんなノリかな」と読者の中で心の準備かでき、ホラーシーンが出てきてもそんなにビックリすることはないのではないでしょうか。

 でも、そんな柔と剛のホラー性質が突然切り替わったら?

 心の中で身構えていたのと別タイプの恐怖演出が出てくると、不意打ちを喰らったようにドキリとします。

 本作はそんなスイッチ具合がとても上手く、読んでいて「ひ」と声が出そうになるシーンが登場します。

 映画版『リング』の最後の貞子のあのシーンがあんなに怖かったのは、遠隔的な呪いのルールだけだと思ってた貞子が、急に物理チックなムーブをしてきたからだったんじゃないか。そんな発見もあり、とても感銘を受けました。

 強烈なインパクトのあるホラー。オススメです!

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