第5話

聞いたことのある名前。


 確か、対戦したことがある相手。


 「 佐藤和馬 」


 「 友達になろうぜ、和馬。俺こんな見た目だから初日早々避けられてさ 」


 「 軽いな 」


 「 お前はイケメンだな 」


 「 何だよそれ 」


 なんともフレンドリー。そして、寄に流されるままに、俺と寄は友達になった。


 今までこんなに絡んできた相手はいなかった。俺に近づいてくるのはみんな、莉央目当てだったから。


 「 寄も莉央目当てで俺に声かけたの? 」


 「 あ〜、莉央ちゃんね。噂通りの美少女だよね〜。でも俺が気になってるのは美奈だから 」


 「 美奈? 」


 「 中学の時さ、不良と間違われて大人達に囲まれたことあって、俺。こんな見た目だから仕方ないんだけど、まあまあショックでさ。その時たまたま通りかかった美奈が間に入ってくれて、その男気に救われたんだわ、俺 」


 「 美奈、男前な性格してるもんな 」


 昼休みになり、寄と二人購買で買ったパンを食べながら気になることを聞けば、どうやら寄は莉央目当てで近づいて来た訳ではなかったようで安心する。


 茶髪なのは生まれつきだから、損するなんて言いながら、この髪のおかげで美奈と出会えたから損ではないなと笑う寄に、素直に好感が生まれた。


 「 和馬、探したんだけど。私達も一緒にいい? 」


 「 もう高校生だぞ。別々でも「どうぞ」…寄 」


 現れたのは、怒ったふりをした莉央と、めんどくさそうな表情を浮かべる美奈。


 お昼一緒に食べる習慣は終わりでいいと言えば、遮るように椅子を並べて口を挟む寄。


 美奈を見てキラキラする瞳は、俺を見て星を飛ばした。口パクで「最高」と言いながら。

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