第11話

夕食を終えてお風呂を済ませる。


 軽く髪をタオルで拭き、リビングに向かえば、まだ制服姿の莉央が来ていた。


 「 …よ 」


 「 …いらっしゃい 」


 帰り道のこともあって、気まずい空気が流れる。


 「 莉央、あのさ「 莉央ちゃんお待たせ〜、張り切って作りすぎちゃった。京子さんにも沢山食べてもらって」… 」


 あの時の発言を弁解しようとすれば、ハイテンションな母が現れて阻止されてしまう。


 「 ありがとうございます。今日は帰りにクレープ食べて来ちゃったので、明日の朝いただきますね 」


 「 あら、駅前に出来たクレープ屋さん?私とも今度一緒に行こうね、莉央ちゃん 」


 「 是非!いちぢくのクレープ、最高でしたよ 」


 そしてスイーツ話で盛り上がる2人を他所に、俺はクレープを食べて来たという莉央の発言にフリーズしていた。


 莉央を追いかけて行った鷹先輩は、クレープ屋が出来たと言いながら自転車を漕いでいた。


 誘われて一緒に行っていたのだろうか。


 俺は彼氏じゃない、ただの幼馴染。


 嫉妬する資格なんて無いが、もしそうだとしたら、心の底から嫌だ。そう身勝手に思ってしまうのだ。

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