雪の名残は恋模様

　秋の終わり。中学三年生の結城秋久は、日々その影を濃くする高校入試と、一年前にクラスで起こったある出来事に、頭を埋め尽くされていた。ある日の放課後、教師から渡された入試関係の書類の一枚が、突如吹いた秋風にさらわれてしまう。追いかける秋久だったが、偶然居合わせた一人の女子生徒に、その紙を拾われる。そしてその女子は、秋久にとって、忘れたくても忘れられない相手―かつてのクラスメイト、宮村雪乃だった。

　「雪だ……」

　舞落ちた花びらが、粉雪に変わる時。再会を果たした二人は、ゆっくりと雪が溶けるように、少しずつ仲を深めていく。
こんな毎日が、ずっと続けばいいのに。そう思う秋久だったが―

　「私は、東京の高校を受ける。中学を卒業したら、引っ越すから」

　雪乃から告げられた未来は、そんな、無常なものだった。