Word12. 「カレンダー」

毎日刻々と進んでいく、

カレンダーの日付。


大嫌いだった。


もっとのびのびと生きたい。

もっと自由に暮らしたい。

そう思ったって勝手に、

毎日朝は来る。


もっとやりたいことがある。

もっと会いたいひとがいる。

なのに無情に時間は身体を通り抜け、

僕の先を進む。


嫌。

こんなの嫌だ。


家を飛び出した。

行く当てなどない。

でも、

ここから逃げ出したい。


いや、

これは逃げるんじゃない。

一種の選択だ。


これから自由に生きていくための、

大きな選択。


肩にバッグの重みを感じる。

それでも走り続ける。


朝が嫌なら離れればいいじゃないか。

夜ばかりなら、きっと朝だって好きになれるだろう。


西の方向へ走る。

走れば走るほど、

後ろの明かりはついてくる。


それでも闇に向かって走る。

まだいける。




まだ光は好きになれない。

でも、

なんかいいかも。


いつかは朝日を浴びて、

あの家に帰ろう。


だから今は走る。


なんだか、

自分の人生に朝が来たみたい。


嫌だな。

が嫌いだったはずなのに。


まぁいいや。

もうちょっと行ってみよう。


闇のその先へ。


カレンダーのその先へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君に捧げたい言葉の短編集 こよい はるか@猫部&KKG所属 @attihotti

現在ギフトを贈ることはできません

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ