Word6. 「思い出」

海で水を飛ばしあった日。

夕日で真っ赤に染まった教室で、

勉強会をした日。


手を繋いで紅葉並木を歩いた日。

間接キスをして微笑みあった日。


思い出って必要なんだろうか。

別になくてもなんでもできるし、

あるメリットなんてどこにもない。


むしろ心についた傷をえぐって、

痛みを感じられないほど切り裂かれる。


あの日常を取り戻せない理不尽を、

この気持ちを伝えられない理不尽を、

思い出というものは与える。


だから思い出なんて必要ないんだ。


——そう、思っていた。

でも、違った。


君は覚えていないほど前のことを覚えていてくれて、

大好きな声で僕に呼びかけてくれた。


今はいなくとも心に生きているんだと、

悟ることができた。


だって、君が呼びかけてくれたから。


ありがとう。


今この口で言っても伝わらないけれど、

それでも言いたかった。


ありがとう。ありがとう。

ありがとう。


君は微笑んだ。

青い青い大空の下で。

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君に捧げたい言葉の短編集 こよい はるか @attihotti

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