その言葉を僕は知らない

アプラニス大陸にある七つの国のうち、人間の住むティユル国の五番目の王子として誕生したスリジエであったが、父親である国王に見放された王子としてその生活は芳しくなかった。
老いた宦官一人を付けるだけで、おおよそ王族どころか高位貴族の子息の扱いにも満たない生活は、やがてスリジエに諦念と王族からの離脱を思うようになる。
そうして目立たない王子として暮らしてきたスリジエの日常は、突如双子の妹と獣人により壊された。
恵まれているはずの妹にはなぜか憎まれ、その妹を番と称して深愛する獣人の手により攫われ、企てられた遊びが、成年までと堪え続けてきたスリジエの心身を疲弊させていく。
だが生きることを諦めかけたそのとき、陽光のような髪を乱れ逆立てた竜人が現れ、金の瞳を爛々とさせ熱を帯びた声で囁く。
 
「見つけた…続きを読む