2024/9/15

「究極において、己を救うことができるのは己のみである」という言葉について、ある程度正しいということは誰もが認めざるをえまい。しかしこの言葉には近代人に特有の傲慢、つまりは自己に対する過信が表れていることに留意すべきであろう。近代以前――つまりは階級制が自明のものとして扱われていた時代にあっては、自己の上に救い主を見出すことは今よりもずっと容易であったし、また人々は救い主を信ずるだけの謙虚さを持ち合わせていたのである。

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