・ワ・ライラ☾


「――これで、“怠惰”の魔神アルマラルが最後に選んだ王の話は、おしまいだ」


 紙に描かれた赤髪の旅人は、最後、笑った娘のように見え―― 

 坊やはごしごしと目をこすった。


「ばあや? それじゃあ魔人はあきらめたの」

「さぁどうでしょうかねぇ。人は欲によわいものですから、魂が怠惰に堕ちるのをずうっと待ってるかもしれませんねぇ……今も」

 たれた目に灯火がうつりこんで緋く揺れる。

「さぁ坊ちゃん、どうしましょうか。ヤギのミルクのあたためたのを? それとも今夜も眠りたくないのなら、あまぁくした珈琲をくわえましょうか」

「う、ううん……ぼく、もう寝るよ」

「そうでしょうとも、賢い坊ちゃん」

 

 老婆は赤い髪をなですいて、ゆらめくランプの火の穂をふうっと消した。


 夜闇に月と星とが 漠々と 

 白砂を銀にきらめかせる 

 漠々と 遠い先まで  


 「よい夢を」



 〜・おわり・ـف



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シアラン 〜魔法のランプと怠惰な溺愛〜 る。 @RU-K

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