第3話 「ようこそ異世界転生者さん」赤ちゃん異世界転生するなり両親に異世界転生者だと知られてた私は溝に捨てられるんでしょうか


  「生まれたわ清五郎」

 「見れば分かるさ阿佐子」


 なんて会話なのかしら。

 気づくと、私は赤ちゃんだった。

 どうやら、生まれたばかりの状況らしい。

 

 「この子の名前だけどね」

 「どうしましょうか」

 

 生まれるまでに、決めておきましょうね。

 どうやら、私はこの異世界で、名前がまだないらしい。


 「本人が決めればいいんじゃないか」


 両親がいて、子に名前をつけず、本人が決めるなんて文化が異世界だろうと存在するのでしょうか。

 母の名前が阿佐子。

 父の名前が清五郎。

 名前だけでなく容姿も、両親は日本人のような外見だ。

 日本をベースにした異世界ながらに、文化はまったく違うのかしら。


 「そうだな」

 「うん、それが良い」


 まったく、よくありません。

 名前ぐらい、両親が付けてください。


 「そうよ。だって、この子は、特別な存在じゃないんだもの」


 何か、突かれる言葉だった。

 私は、特別な存在じゃないらしい。


 「英雄になるわけでもないんだ」

 「俺達も、彼女の名前を知らないしな」


 いえ、赤ちゃんの名前は、両親が知ってるものではなく、考えてつけるものです。

 いくら異世界といえど、これは不変のルールのはずですが。


 「と、いうわけだ」

 「ようこそ異世界転生者さん」


 !

 私が、異世界転生者だという事は、彼らに知られているらしい。

 生まれてきた赤ちゃんが、異世界転生者だと彼らに知られていたら、私はどうなるのでしょうか。

 溝にでも捨てられて死ぬのでしょうか。

 それは、嫌だ。

 死ぬのなら、コントローラーを握って、負けて死にたい。


 「異世界転生者さん」

 

 今度は、彼女も私の事を異世界転生者さんと呼ぶ。

 あの、貴女、私を産みましたよね。

 彼女からしたら、産んだばかりの赤ちゃんに、私が憑依転生してきたような。

 赤ちゃんを乗っ取った略奪者なのでしょうか私は。


 「貴女は今心配しているでしょう」

 「でもね、貴女は私と清五郎がSEXで作った存在であり」

 「憑依転生してきたわけじゃないの」


 はぁ。私は、憑依転生して、彼女達の赤ちゃんを乗っ取ったわけではないようだ。

 それは、良かった。


 「でもだ」

 

 清五郎が、口を挟む。


 「君は、私達の本当の子供というわけでもないんだ」


 いえ、貴方達がSEXして作った赤ちゃんなら、それ、貴方達の子供ですよね。

 まったく、異世界というのは理解に苦しむわ。


 「俺達の遺伝子は、そりゃあ入ってるよ」


 貴方達の遺伝子が入ってるなら。

 それは、貴方達の子供よ。

 こんなの、異世界だろうと関係ないわ。

 当たり前ですよね。

 異世界って、自然の節理も関係ないんですか。

 いい加減にして下さい。

 私も、怒りますよ。


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