マッドでルナティックでパンクな――幕末のイラストレーター

「ペンは剣よりも強し」という言葉があります。
しかし剣に身を捧げた人が修羅となるように、ペン≒絵筆も時に人を修羅になるまで駆り立てるもののようです。
それを強く強く実感させる河鍋暁斎という絵師の物語でした。
内容は一人のお雇い外国人を語り部としつつも、物語は主に河鍋暁斎の自分の語りで進みます。
この口調がとても読みやすく、読んでいて無理なく情景が浮かびます。
絵を描くということに取り憑かれ、それを「鬼」と表現するまでのいわば渇望。
それは他人から見れば、狂人と指さされても仕方ないものだったのでしょう。
この実在の人物を魅力たっぷりに書かれた物語は、語り口調と相まって心地よい体験です。
一人の画業の修羅にして、これ以上ないくらいの努力家の絵師の物語。ぜひお読みください。

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