終わってしまった世界に響くギターの音色


音楽があなたの人生の重荷を振り払い、あなたが他の人たちと幸せを分かち合う助けとなるように。

ベートーヴェンのこの言葉。
音楽を聞くのが好きな人。
音楽を演奏する人。
そのどちらも「その通り」とうなずくのではないでしょうか。

物語は文明が崩壊して半世紀が過ぎた地球。
「僕」は東京へと旅する途中で、一人の女の子と出会います。
ギターを演奏する彼女。
そして出てくる「ロックンロール」という言葉。

ロックンロールとは何だろう?

「僕」のこの質問にハッとさせられます。
そうだった。彼も彼女も、その言葉の意味を知らないで育った世代なんだ、と。
小さな言葉を一つ使って、世界観を表す表現が素敵です。

読んでいてその光景が想像できる物語です。
文明が滅び、主義も思想も政治もなくなり、空っぽになった世界。
そこに響くギターの音と、それを弾く少女。
自然とその情景が、音が、イメージが浮かびます。
とある小さなポストアポカリプスの物語。
どうぞお読みください。

その他のおすすめレビュー

高田正人さんの他のおすすめレビュー22