歴史小説の楽しさの一つ、それは「こんな人物がいたんだ」という驚き
- ★★★ Excellent!!!
本作は神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世をメインにした小説です。
誰? と思うかもしれません。自分もそうでした。
けれどもこの言葉に驚きました。
イスラム教徒からキリスト教徒へのエルサレムの譲渡――無血十字軍
十字軍と言えば、クルセイダーというカッコイイ言葉とは裏腹に、二つの宗教の激しい対立がよく話題となります。
どうしても現代人の視点から、もっとお互いを理解できなかったのだろうか、と思ってしまう歴史の中の大きな出来事。
そのエルサレムを無血開城? 本当に? できたの?
その思いが、本作を最後まで読む大きな理由となりました。
「王座上の最初の近代人」「世界の驚異」そういったはなばなしい通り名のフリードリヒ二世の生涯を追うもよし。
あるいはこの時代の渦巻く権力者たちの争いの結末を見届けるもよし。
それとも――
一人の才能あふれる時代を先取りした皇帝と、
宗教こそ違えどもしかしたら同じ願いを抱いていたかもしれないスルタン・アル=カーミルとの文通の行方に注目するもよし。
そんな、魅力的な皇帝を描いた作品です。
歴史が好きな方、天才の皇帝が好きな方、ぜひどうぞ。