人を越え、画のために狂った男。その凄絶な生涯の記録

 全編を通し、とにかく迫力のある一作です。

 河鍋暁斎。幽霊画などで知られる幕末・明治で活躍した浮世絵師。彼が少年期からどのように絵のために人生を費やしてきたかが語られていきます。

 まず、この暁斎が鹿鳴館やニコライ堂を設計したジョサイア・コンドルと交流を持っていたという意外な事実が示されます。そしてコンドルの口により、生前に暁斎が語った話が人々に伝えられるという形式を取ります。

 リアルな死体を描くために、道端で生首を拾ってきてしまった話。そして、師である歌川国芳から街中で喧嘩を見かけたら混ざって来いと指導された話。

 そうした経験から暁斎が学び取った「真髄」というのは、創作の上でとても理に適ったものとなっており、思わず感嘆させられる内容となっていました。

 絵のための熱意。そして絵を極めていく中で見えていくもの。そうした意識の流れを読んでいくことは、自然と読む人の心の中にも熱を灯していくものとなっています。

 一人の人間の生き様と、そこに込められた圧倒的な熱。暁斎という人物の魅力と強烈なケレン味をしみじみと味わえる作品でした。

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