本作は怖いお話です。主人公は働いて定年後はゆったりと過ごしたいと思って生活しています。妻に娘夫婦とその娘と、家族に恵まれています。ただ、見落としていたことがあったのか、自身の思い描いていたものと異なった定年後となったのか、不思議なモノを見ます。家族が自身をどう思っているか、その焦燥感がじりじりと感じられました。その表れか、不思議な体験をするのですが、そのアイデアは秀逸です。私の父も十五歳で実家へ仕送りをするために東京へ出てきました。世代的にも働くことへの意義が強かったのでしょう。是非、ご一読ください。
「自業自得だ」そう感じる人が実際に居る。この世界の恐怖がリアルであり、誰にも訪れえる可能性を秘めている。上には上が居る。そして下にも際限なく……目の前の自身へ憚る不幸ばかり見ていると、自分自身が腐り同類となっていく。目の前の幸運に、気づくかどうかで運命も変わる。そんなことを教えてくれる作品です。
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