[総ルビ]元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)

６ ポーションの効果だよ

●６ ポーション（potion）の効果（こうか）だよ

　なんとか午前中（ごぜんちゅう）の実演（じつえん）販売（はんばい）を終（お）わらせて、客（きゃく）が捌（【さば】）けたところで、お昼（ひる）休憩（きゅうけい）にする。

　朝（あさ）は買（か）い物（もの）のあと、お昼（ひる）を買（か）うのもぎりぎりだったから、全（まった）く自転車（じてんしゃ）操業（そうぎょう）もいいところだ。

　露店（ろてん）で食（た）べ物（もの）を探（さが）して、購入（こうにゅう）した。

　今日（きょう）はレタス（lettuce）とトマト（tomato）のサンドイッチ（sandwich）だ。二（ふた）つ、買（か）って一（ひと）つをポムに分（わ）ける。

「ポム美味（おい）しい？」

「きゅっ」

「そう、よかったね」

　トマト（tomato）の塩気（しおけ）やレタス（lettuce）の葉（は）っぱが美味（おい）しい。これは当（あ）たりだった。

　ちょっと奮発（ふんぱつ）したけど、よかったわ。

「トマト（tomato）美味（おい）しい、これなら毎日（まいにち）でも食（た）べたいね」

　自転車（じてんしゃ）操業（そうぎょう）はまだまだ続（つづ）く。宿（やど）代（だい）は今日（きょう）の分（ぶん）は確保（かくほ）したけど、もし明日（あした）雨（あめ）で露店（ろてん）が開（ひら）けないと、宿（やど）代（だい）も足（た）りなくなる。困（こま）る。

　貧乏（びんぼう）暇（ひま）なし。あくせく働（はたら）くぞっと。

　残（のこ）っている薬草（やくそう）をまた錬金（れんきん）釜（がま）でポーション（potion）に錬成（れんせい）する。

　またまたお客（きゃく）さんが集（あつ）まってきて見（み）てくれる。

　その中（なか）の一人（ひとり）に左手（ひだりて）を怪我（けが）している人（ひと）がいた。

　傷（きず）があり、周（まわ）りが赤（あか）く腫（【は】）れていた。

「ポーション（potion）一（ひと）つください」

「はい、どうぞ」

　受（う）け取（と）った人（ひと）は、早速（さっそく）目（め）の前（まえ）でポーション（potion）を使（つか）い始（はじ）める。

　まず少量（しょうりょう）を飲（の）み、残（のこ）りを傷（きず）がある左手（ひだりて）に掛（か）けていく。

「うっ、ちょっと染（し）みるな」

　そしてじっと見（み）ていると、ぎりぎり分（わ）かるくらいの早（はや）さで腫（は）れが引（ひ）いてきて傷（きず）も塞（【ふさ】）がりだした。

「なんだこのポーション（potion）、めっちゃ効（き）く。おいみんな俺（おれ）の左手（ひだりて）見（み）てくれよ」

「あの傷（きず）がもう引（ひ）いていくなんて……」

「すごい効（き）き目（め）じゃあないか。市販品（しはんひん）と全（まった）く違（ちが）う、もっとゆっくり効（き）くものだろ」

「たった一本（いっぽん）のポーション（potion）でこんだけ効（き）けば、お得（とく）だよ、まる儲（もう）けさあ。この効（き）き目（め）でこの値段（ねだん）。信（しん）じられない。超（ちょう）お買得（かいどく）だあ」

　あわわわわ。製作（せいさく）の実演（じつえん）販売（はんばい）はしてたけど、効（き）き目（め）を確（たし）かめる実演（じつえん）販売（はんばい）はしてなかったのに、勝手（かって）にしてくれた。

　さすがに売（う）れまくり、というわけにはいかないけど、必要（ひつよう）な人（ひと）は買（か）っていってくれた。

　十日（とうか）しか持（も）たないから、常備薬（じょうびやく）みたいに買（か）うのはかなりもったいない。

　これだけ効果（こうか）が実証（じっしょう）されたら売（う）れるだろう、と思（おも）うんだけど、今（いま）見（み）ていた人（ひと）とその人（ひと）から話（はなし）を聞（き）いた人（ひと）は分（わ）かってくれる。

　でも他（ほか）のその他（た）大勢（おおぜい）は、すぐに噂（うわさ）が広（ひろ）まるっていうほど狭（せま）い世界（せかい）ではないので、ものすごく有名（ゆうめい）になって、みたいなことは起（お）こらないのだった。

　まあそうだよね。ここはハシユリ村（むら）じゃないし。

　でも話（はなし）を聞（き）いた限（かぎ）り、このフリ（[flea）マ（market]）で売（う）られている質（しつ）の悪（わる）いポーション（potion）だけでなく、お店（みせ）とかで売（う）っている正規品（せいきひん）でも、あまり回復（かいふく）効果（こうか）が高（たか）くないっぽいという感（かん）じだったのは、とても気（き）になるところだ。

　もしかして王都（おうと）ではポーション（potion）作成（さくせい）の技術（ぎじゅつ）がひょっとして高（たか）くないのでは？

　疑惑（ぎわく）は深（ふか）まるばかりだ。

　安（やす）いって言（い）っても、村（むら）の安（やす）いポーション（potion）と違（ちが）い、周（まわ）りの露店（ろてん）に合（あ）わせた王都（おうと）価格（かかく）だから、私（わたし）からしたらやや高（たか）いくらいに思（おも）う。

　村（むら）の気分（きぶん）のまま、売（う）っていたら、めちゃくちゃ安（やす）くて効（き）きまくる怪（あや）しすぎるポーション（potion）になるところだった。セーフ（safe）。

　人（ひと）も入（い）れ替（か）わり、私（わたし）のポーション（potion）の効果（こうか）を知（し）る人（ひと）がいなくなったし、在庫（ざいこ）も残（のこ）り数個（すうこ）になったので、午後（ごご）二回目（にかいめ）をやろうと思（おも）う。

「午後（ごご）二回目（にかいめ）の、ポーション（potion）作成（さくせい）の実演（じつえん）販売（はんばい）をいたします」

　誰（だれ）が聞（き）いているでもないのに、一応（いちおう）開始（かいし）のアナウンス（[announce-）　（ment]）をしてみる。

　なんだろうと思（おも）ってこっちを見（み）る人（ひと）に赤面（せきめん）しつつ、周（まわ）りのことは気（き）にしちゃだめだ、と自分（じぶん）に言（い）い聞（き）かせて作業（さぎょう）に集中（しゅうちゅう）する。

　まずは薬草（やくそう）をナイフ（knife）で細（こま）かく切（き）るところからだ。

　後（あと）の作業（さぎょう）は前回（ぜんかい）と一緒（いっしょ）なので、ぱぱっと混（ま）ぜて煮（に）てミルルの実（み）を入（い）れて、ひと煮立（にた）ちさせて、癒（い）やしの魔力（まりょく）を浸透（しんとう）させて発光（はっこう）したら、魔力（まりょく）を止（と）めて完成（かんせい）。

　完成（かんせい）したらもちろん発光（はっこう）は止（と）まってしまう。

　ずっと発光（はっこう）していたら、面白（おもしろ）いし、ポーション（potion）だと一発（いっぱつ）で分（わ）かるんだけど、そこまで便利（べんり）にはできていない模様（もよう）。

「すごいすごい」

「なるほど、こうやって作（つく）るんだな」

「錬金術（れんきんじゅつ）師（し）様（さま）だ。なんでこんな露店（ろてん）でやってるんだろう」

　感想（かんそう）はさまざまだけど、全体的（ぜんたいてき）には好意的（こういてき）だ。かなりうれしい。

　こう、なんというかみんなに認（みと）められているみたいで。

　まあ、後（あと）はずっと一緒（いっしょ）なので、以下（いか）略（りゃく）。

　本日（ほんじつ）は三回目（さんかいめ）もやって、そこそこの売（う）り上（あ）げになりましたとさ。