15 決断の時だよ

●15 決断けつだんときだよ


 午後ごご普通ふつう露店ろてんす。

 気持きもちのうえではだいぶちがったけど、露店ろてん営業えいぎょうまえなにわらなかった。

 実演じつえん販売はんばいをすると一時的いちじてきひとあつまってれる。

 それがわるとひとがさっといなくなってしまう。


低級ていきゅうヒーリングhealingポーションpotion出来できてです。いかがですか~」

「きゅっきゅっ」


 たまにおもしたようにびかけもしてみる。

 あまり積極的せっきょくてきに、こえけるのはじつ苦手にがてなのだった。


「きゅっ、きゅっきゅっ。きゅっ、きゅっきゅっ」


 たまにポムもこえげつつダンスdanceしたりして集客しゅうきゃく協力きょうりょくしてくれる。

 健気けなげ大変たいへん可愛かわいい。

 でもそれであつまってくるのは、というと。


スライムslimeさんだぁ」

スライムslimeかわいいにゃあ」


 そうなのだ。ポム愛好家あいこうかあつまってきてしまう。


さわってもいいですか」

「きゅっ」

「やったっ。あぁ、やわらかぁ。なんだろうこの感触かんしょく、すごくいいです」


 おんなたちがあつまっててポムをかこみだすと、ポムも満更まんざらではないらしく、って相手あいてをしている。

 いてもらったり、さわられたり、けっこうスキン{skinシップship}きなんだなっておもう。

 でもおんなにはそうだけど、比較的ひかくてきおのこひととはそういうことはしないみたい。

 おんなきなんだなっていう印象いんしょうだった。


 ポムはわたしおんなだからついてきてくれるんだろうか。

 テイムtameとはいうものの、べつテイマーtamerスキルskillというものがあってそれで魔法まほう誓約せいやくてきしばっているというわけではないんだ。

 ただポムが勝手かってわたし一緒いっしょにいるだけ、というのがただしい。


 こうやってのどかな時間じかん露店ろてんごしていると、決断けつだんするのをわすれたくなる。

 でも、どちらかにはめないといけない。


 正直しょうじきっている。


 最初さいしょわずホーランドにしようとおもっていた。でもはなしいてみてメホリックもわるくないかなともかんがえる。

 やっぱりホーランドかなとおもう。


 ろう紳士しんしのところのおんなたちは、フリフリのみじかスカートskirtに、エプロンapronドレスdress。それからむね強調きょうちょうするようなデザインdesign

 どことなくただよう、いけないような雰囲気ふんいきをまとったメイドmaidふく

 ホーランドのところにもメイドmaidふくひとはいたけど、スカートskirtみじかくなかったし、そこまでフリフリでもなかった。

 それに普通ふつうのおねえさんだった。あんなわかたちそれも、たくさんはいない。


 それからユグドラシルYggdrasil存在そんざい


 いま秘薬ひやくつくれる錬金術れんきんじゅつがいないから、実質じっしつ効力こうりょくっていないけど、ユグドラシルYggdrasilっぱがあれば、特級とっきゅうヒーリングhealingポーションpotionつくれる。

 お値段ねだんもそれなりだし、ほか材料ざいりょうもいるけれど、製法せいほうつたわれば、わたし以外いがいではメホリックの専売せんばい特許とっきょになってしまい、将来的しょうらいてき両者りょうしゃパワーpowerバランスbalanceくずれてしまう。


 露店ろてんをしながら、むずかしいことをかんがえる。

 こういうことは、本当ほんとうは、苦手にがてちゅう苦手にがてなのにゃん。にゃんにゃん。あー。


 ねこ散歩さんぽさせているひととおった。可愛かわいい。


 わたしねこみたいに自由じゆうあるまわって、のんびりお昼寝ひるねして生活せいかつしたいなぁ。


 でもわたし錬金術れんきんじゅつ。その技術ぎじゅつつた継承けいしょうして、まちひとやし、便利べんりアイテムitemまち提供ていきょうする義務ぎむがあるのだ。

 お昼寝ひるねはしたいけど、そうもっていられない。これは使命しめいなのにゃ。


 それも弟子でしって、そのひとたちにわりにつくってもらえるようになれば、ずっとらくになるとおもう。

 最低さいていでもすうげつから数年すうねんはかかるとおもう。さきながい。


 そうだった。長期ちょうきのことも色々いろいろ考慮こうりょしないとだめだよね。



 それからまた両者りょうしゃたずねにった。薬草やくそうえんけんがあったからだ。

 どちらも一定いっていおおきさ以上いじょう薬草やくそうえん確保かくほしてくれる、ということが確定かくていした。

 これで薬草やくそうえん問題もんだい一応いちおう解決かいけつしたけれど、あとは結論けつろんだ。




 あれから一週間いっしゅうかん。ついに決断けつだんときだよ。


 露店ろてん両者りょうしゃあらわれた。


「こんにちは、メイラさん、ボロランさん」

「こんにちは、ミレーユちゃん」

「こんにちは、ミレーユじょう


 かるスカートskirtまんで上品じょうひんにお辞儀じぎをするメイラさん。

 紳士しんしぼうげて、あたまげるボロランさん。


 わたしいそいであわあわして、あたまかるげる。


 さいわい、いまはおきゃくさんも一段落いちだんらくしている。


「まずは結論けつろんからいますね」

「はい」

「よいですぞ」


わたしは、その。ホーランド商業しょうぎょうギルドguildにします」

「やった、さすがミレーユちゃん」

「そうですか、残念ざんねんです。ミレーユじょう


「でも、条件じょうけんというか、おまけというか。メホリック商業しょうぎょうギルドguildから、一人ひとり限定げんてい弟子でしろうとおもいます。最初さいしょはお手伝てつだいからですけど」

「なんと」

「なるほど、興味きょうみぶかい」


「とりあえず最初さいしょ一人ひとりです。それからミルルそうくわえたポーションpotionレシピrecipeなど、いくつかのものは、両者りょうしゃ公開こうかいしていきます。自分じぶんたちで練習れんしゅうしてつくれるようになってください。こまったときは相談そうだんしてくれていいです」

「うむ、わるくはないわ」

正直じょうしきたすかります」


「こんなかんじです」


 はなしはいったんわり、真面目まじめかおろう紳士しんしと、笑顔えがおあふれるおねえさんはかえっていった。


 ホーランド商業しょうぎょうギルドguild加盟かめいして、おみせはたけレンタルrentalすることが決定けっていした。

 これからもっと頑張がんばらないと、ファイト{fight}だよ。


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