[総ルビ]元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)

滝川 海老郎

錬金術調薬店

1 めざせ王都だよ

●タイトル

もと貧乏びんぼうエルフelf錬金術れんきんじゅつ調薬ちょうやくてん

●通常版

https://kakuyomu.jp/works/16816927862953378978


●あらすじ

完結かんけつみ。田舎いなかでは貧乏びんぼう錬金術れんきんじゅつのミレーユ。あにいえ彼女かのじょ十三歳じゅうさんさいぎて居場所いばしょがなくとおあこがれの王都おうと移住いじゅう決意けついする。王都おうとてみれば錬金術れんきんじゅつ衰退すいたいしていて技術ぎじゅつ水準すいじゅんひくかった。結果けっかてきにミレーユは世界せかい最高さいこう水準すいじゅん錬金術れんきんじゅつだったことが判明はんめいする。

このくにでは十三歳じゅうさんさい年中式〔ねんちゅうしき〕むかえ、半分はんぶん大人おとなみとめられて結婚けっこんもできる。

まずは露店ろてんでのポーションpotion販売はんばいからはじめて、どちらの商業しょうぎょうギルドguild加入かにゅうするかで一悶着ひともんちゃくする。おみせレンタルrental契約けいやく錬金術れんきんじゅつ調薬店ちょうやくてん開業かいぎょうする。しん商品しょうひんうれれすぎてこまったり、ペットpetスライムslimeわすれたころに活躍かつやくしたり、火事かじきて大混乱だいこんらんしたり、ユグドラシルYggdrasilっぱ、世界樹せかいじゅをめぐって騒動そうどうがあったり、たのしくもいそがしい毎日まいにちおくることになる。

相棒あいぼうスライムslimeとともに二人ふたり王都おうと生活せいかつ満喫まんきつしつつ、弟子でし美少女びしょうじょ同棲どうせいしてかよいのメイドmaidさんもくわえて、錬金術れんきんじゅつ調薬店ちょうやくてん経営けいえいしていく。


●1 めざせ王都おうとだよ


低級ていきゅうポーションpotionください」

「こっちもポーションpotionくれ」


 王都おうとにきて初日しょにち薬草やくそうい、露店ろてん低級ていきゅうポーションpotion実演じつえん作成さくせいして販売はんばいした。

 きはおもった以上いじょう大盛況だいせいきょうだった。



 ――こんなにれるなんて。王都おうと最高さいこう



 しかし露店ろてんポーションpotionっている錬金術れんきんじゅつほかにいない。

 普通ふつうはおみせかまえているものらしい。

 ほか露店ろてんてみたけど、転売てんばい中古ちゅうことかの低級ていきゅうポーションpotion品質ひんしつはどれもわたしのものよりあきらかにひくかった。さっとかるほどだったのだ。

 いてしまった。王都おうと錬金術れんきんじゅつレベルlevelは、おもった以上いじょうひくいらしい。

 これは、わたしがなんとかするしか、ないんじゃ、ないのかな。

 活躍かつやくできるのはうれしいけど、おもったより、これは大変たいへんだぞ……。




  ◇


 今日きょう ハシユリむらともおわかれだ。

 わたしはずっとあこがれだった王都おうとについに旅立たびだつ。相棒あいぼうスライムslime ポムだけだ。


「おにいちゃん、さようなら、ばいばい」

「おお、達者たっしゃでな!  ミレーユ、ポム」

「きゅきゅぅ」


 ハシユリむら田舎いなか田舎いなか王国おうこく秘境ひきょうにして、最奥さいおうともわれる辺境へんきょう

 両親りょうしんさき他界たかいしており、わたしとおにいちゃんはずっとおばあちゃんにそだてられる。

 おばあちゃんはむら唯一ゆいいつ錬金術れんきんじゅつ生計せいけいてていた。

 そのおばあちゃんも、去年きょねんくなった。

 いまはおにいちゃんがいえいで錬金術れんきんじゅつをしている。そうなると問題もんだいわたしだ。むら二人ふたり錬金術れんきんじゅつ必要ひつようないのだ。

 おにいちゃんは許嫁いいなずけがいて、そのうち結婚けっこんしたら、わたし完全かんぜんようなしだった。


 それならうわさく、おんなならだれでもあこがれる、田舎いなかむらでは伝説でんせつ王都おうとってみたい。


 ということで、わたしいえることになった。


 相棒あいぼうのポムはむかしあるやま薬草やくそう採取さいしゅをしていたところ、さき薬草やくそう群生地ぐんせいちでむしゃむしゃしていたヤツで、仲良なかよくなってわたしあとをついてきて以来いらい、ずっと一緒いっしょにいる。

 なんでわたしられたかはよくからない。

 もちろんポムの大好物だいこうぶつ薬草やくそうだ。それも貴重きちょうヒールheal効果こうかたか薬草やくそうばかりがだいきだった。


 べつ薬草やくそうしかべないかというと、そんなことはなく野菜やさいも、普通ふつう雑草ざっそうべる。

 そのへんこだわりは、しゃべったりしないので、よくからない。


王都おうとたのしみだねー、ポムぅ」

「きゅきゅぅ」


 つぎまちきの馬車ばしゃ一緒いっしょせてもらって、むらからていく。

 ポムは普段ふだんからぽんぽんねて、きゅぅきゅぅくだけだ。

 いますわっているわたしひざうえで、かる上下じょうげするだけで大人おとなしくしている。


 いえ貧乏びんぼうなので、ってこれるものには限界げんかいがあった。

 わたし錬金れんきん収納しゅうのうリュックサックrucksackひとつで、そとには薬効やっこうたか薬草やくそう植木鉢うえきばちをいくつもぶらげてってきている。

 このむらでは別段べつだんめずらしくもなんともない薬草やくそうだけど、んだおばあちゃんのはなしによれば、そとむらではめずらしいものがおおいんだって。

 だから、入手にゅうしゅできないかもしれないとおもって、なるべくおおくのたねといくつかの植木鉢うえきばち持参じさんしたのだ。

 これだけでも、そと世界せかいではそれなりの値段ねだんになる。ただむらではもいいところなので、っていても貧乏びんぼうちがいなかった。

 そもそもむらそとでは、それらの薬草やくそうはけっこうマイナーminorみたいで、りにしても全然ぜんぜんれないらしくて、商人しょうにんっていってくれない。そもそも薬草やくそうだとらないみたいで、ことわられた。


貧乏びんぼう生活せいかつとはおさらばするんだもんねー」

「あはは、じょうちゃん頑張がんばれよ」

「はい」


 商人しょうにんさんから激励げきれいをもらう。


 うちはむらなか細々ほそぼそポーションpotionとか魔道具まどうぐなんかをつくったりして、なんとか生活せいかつしていて貧乏びんぼうなのだ。

 色々いろいろ商品しょうひんつくれても、材料ざいりょうをこのむらまではこんでくると、その輸送ゆそう往復おうふくだいで、かなりの金額きんがくんでいってしまうので、錬金術れんきんじゅつ製品せいひん輸出入ゆしゅつにゅうみたいなこともやっていなかった。


 おにいちゃんにはわるいけど、このせまむらなか頑張がんばってもらおう。


 わたし世界せかいばたいて、王都おうと錬金術れんきんじゅつまたは薬屋くすりやをするのだ。

 それはきっと、すごくキラキラした世界せかいはなやかで、とってもすごいんだとおもうんだ。


 商人しょうにんさんの馬車ばしゃ同乗どうじょうして三日みっか、やっとまち到着とうちゃくした。はじめてのまちだ。ちいさいころ両親りょうしんたことがあるらしいけど、記憶きおくにはないんだよね。


「ありがとうございました」

「ミレーユちゃん、さようなら、よいたびを」


 おれいってなけなしのおかねはらい、立派りっぱなおのぼりさんになってやす宿やど一泊いっぱくする。

 そしてそこからは乗合のりあい馬車ばしゃいで何日なんにち何日なんにちもかかって、やっとのことで、はあ、やっとのことでですよ、王都おうと目前もくぜんまでることができた。


「すごいよポム、ポムて、あのかべ、すごい、おおきい、たかぁーい」


 わたしはついはしゃいでしまう。

 だってそこはまぎれもなく王都おうとかべで、あのなかにはくに一番いちばんおおきいまちひろがっているはずだから。

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