[総ルビ]元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)

１０ 聞き込み調査だよ

●１０ 聞（き）き込（こ）み調査（ちょうさ）だよ

　ホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）とメホリック商業（しょうぎょう）ギルド（guild）について調査（ちょうさ）しよう。

　露店（ろてん）は一週間（いっしゅうかん）の利益（りえき）がそれなりに貯（た）まったので、一応（いちおう）大丈夫（だいじょうぶ）。

　露店（ろてん）を閉（し）めて、いざゆかん。

　あてもなく聞（き）き回（まわ）るということもできるけど、できれば噂話（うわさばなし）よりも信用度（しんようど）の高（たか）い情報（じょうほう）を得（え）たい。

「やっぱりあそこしかないよね、ポムポム」

「きゅっ」

　ポムの同意（どうい）を得（え）られたので問題（もんだい）のあそこを探（さが）しに行（い）く。

　その辺（へん）の人（ひと）を掴（つか）まえて聞（き）いてみたら場所（ばしょ）はすぐに分（わ）かった。噴水（ふんすい）の真（ま）ん前（まえ）だ。

　剣（けん）と盾（たて）の意匠（いしょう）、冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）だ。辺境（へんきょう）の村（むら）、ハシユリ村（むら）にも冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）支部（しぶ）があるのでお馴染（なじ）みだった。

　もっとも職員（しょくいん）は支部長（しぶちょう）と受付（うけつけ）の二人（ふたり）しかいなかったけど。

　さすが王都（おうと）の冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）、でかい。

　さぞ大量（たいりょう）の冒険者（ぼうけんしゃ）と依頼（いらい）でてんやわんやかなと入（はい）ってみたけれど、中（なか）は意外（いがい）なことにそれほど混（こ）んでいなくてまったりしている。

　そっか。ここは王都（おうと）。魔物（まもの）の森（もり）もダンジョン（dungeon）もなく、薬草（やくそう）も畑（はたけ）で栽培（さいばい）している。

　そもそも王都（おうと）では冒険者（ぼうけんしゃ）の本業（ほんぎょう）がほとんどないようだ。

　その代（か）わり雑用（ざつよう）依頼（いらい）とかが壁（かべ）の依頼（いらい）ボード（board）にたくさん貼（は）られていて、冒険者（ぼうけんしゃ）とは名（な）ばかりの若（わか）い子（こ）たちがチェック（check）していた。

　剣（けん）と盾（たて）の冒険者（ぼうけんしゃ）はここにはほとんどいない。

　すいてる受付（うけつけ）に直行（ちょっこう）する。

「すみません。商業（しょうぎょう）ギルド（guild）について伺（うかが）いたいんですけど」

「ここは冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）ですけど……」

「分（わ）かってます。商業（しょうぎょう）ギルド（guild）の一般的（いっぱんてき）な情報（じょうほう）が知（し）りたくて、実（じつ）は――」

　私（わたし）はこちらの状況（じょうきょう）をかいつまんで説明（せつめい）した。

　この王都（おうと）には二（ふた）つの商業（しょうぎょう）ギルド（guild）が存在（そんざい）しているという。

　それがホーランドとメホリックだ。

　もともとは名前（なまえ）のない一（ひと）つの商業（しょうぎょう）ギルド（guild）だったという。

　しかし内紛（ないふん）による内紛（ないふん）を重（かさ）ねついにホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）が分離（ぶんり）独立（どくりつ）した。

　古（ふる）くからあるほうはこれに対抗（たいこう）してメホリック商業（しょうぎょう）ギルド（guild）と名乗（なの）っている。

　メホリック商業（しょうぎょう）ギルド（guild）は、元（もと）からあるギルド（guild）なので比較（ひかく）して大（おお）きい。特（とく）に商人（しょうにん）、商店（しょうてん）、旅（たび）商人（しょうにん）が多（おお）く在籍（ざいせき）しているという。

　ホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）は主（おも）に職人（しょくにん）たちが旗揚（はたあ）げしたため、鍛冶屋（かじや）、パン（[bread]）屋（や）、錬金術（れんきんじゅつ）師（し）、裁縫屋（さいほうや）などが多（おお）い。また職人（しょくにん）と近（ちか）い専門店（せんもんてん）系（けい）の商店（しょうてん）も加盟（かめい）者（しゃ）が多（おお）いという。

　ホーランドは新興（しんこう）ギルド（guild）であり、父親（ちちおや）のホーランド会長（かいちょう）と副会長（ふくかいちょう）のまだ若（わか）い娘（むすめ）が主（おも）に指揮（しき）をとって、ギルド（guild）を牽引（【けんいん】）している。

　それに対（たい）してメホリックは伝統的（でんとうてき）な古（ふる）い家（いえ）が集（あつ）まってギルド（guild）を運営（うんえい）している。ただ凝（こ）り固（かた）まった古（ふる）い考（かんが）えが嫌（いや）で若（わか）い人（ひと）などは近年（きんねん）ホーランドに移籍（いせき）する人（ひと）が続出（ぞくしゅつ）しているそうだ。

　それでもメホリックのほうがギルド（guild）が大（おお）きいぶん声（こえ）も大（おお）きい。影響力（えいきょうりょく）はメホリック優勢（ゆうせい）だった。

　どちらのギルド（guild）も危機感（ききかん）を持（も）っており、貴族（きぞく）側（がわ）へはどちらの意見（いけん）も平等（びょうどう）に取（と）り扱（あつか）うように、という対外（たいがい）声明（せいめい）を出（だ）していた。

　両（りょう）ギルド（guild）の現在（げんざい）の地位（ちい）は、対外（たいがい）的（てき）には平等（びょうどう）ということになっている。

「なるほど、分（わ）かりました」

「ご利用（りよう）ありがとうございました。冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）会員（かいいん）ですか」

「はい」

　身分（みぶん）証明書（しょうめいしょ）カード（card）を提出（ていしゅつ）する。これは王都（おうと）に入（はい）るときに門（もん）で出（だ）したのと同（おな）じカード（card）だ。

　身分（みぶん）証明書（しょうめいしょ）カード（card）は、各（かく）ギルド（guild）でのギルド（guild）カード（card）を兼用（けんよう）している。そのぶんなくしたら大変（たいへん）だ。

「はい確（たし）かに。では情報（じょうほう）料（りょう）、銀貨（ぎんか）一枚（いちまい）となります」

「ですよね。分（わ）かりました」

　お金（かね）を取（と）るんだな、と思（おも）いつつ、素直（すなお）に従（したが）う。

　冒険者（ぼうけんしゃ）も商人（しょうにん）も情報（じょうほう）は命（いのち）だ。ここも商売（しょうばい）なので、当然（とうぜん）仕事（しごと）をしたらお金（かね）が必要（ひつよう）だ。

　正確（せいかく）な情報（じょうほう）に対（たい）して、対価（たいか）は必要（ひつよう）だろう。

　一日（いちにち）の稼（かせ）ぎは材料（ざいりょう）費（ひ）を引（ひ）く前（まえ）で銀貨（ぎんか）二十四枚（にじゅうよんまい）ほど。

　ここから宿（やど）代（だい）が一日（いちにち）銀貨（ぎんか）五枚（ごまい）。それから昼食（ちゅうしょく）が銅貨（どうか）五枚（ごまい）。

　ちなみに黒（くろ）パン（[bread]）が銅貨（どうか）三枚（さんまい）。

　銅貨（どうか）十枚（じゅうまい）で銀貨（ぎんか）一枚（いちまい）。

　銀貨（ぎんか）百枚（ひゃくまい）で金貨（きんか）一枚（いちまい）になる。

　銀貨（ぎんか）一枚（いちまい）なら安（やす）い方（ほう）だろう。

「はあ、次（つぎ）はどっちにしようか？」

「きゅきゅ」

「そうだよね。ポムに聞（き）いても分（わ）かんないよね」

「きゅっ」

　さてホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）に先（さき）に行（い）くか、メホリック商業（しょうぎょう）ギルド（guild）に行（い）くか。

　うーん。先（さき）に話（はな）しかけてくれたのはホーランドだったし、先（さき）に行（い）ってみるか。

「すみません。そういえば、ホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）ってどこですか？」

　冒険者（ぼうけんしゃ）ギルド（guild）の受付（うけつけ）でついでに聞（き）いてみる。

　南（みなみ）大通（おおどお）りを行（い）った南（みなみ）中央（ちゅうおう）広場（ひろば）前（まえ）だそうだ。

　ということで、次（つぎ）はホーランド商業（しょうぎょう）ギルド（guild）本部（ほんぶ）へ行（い）ってみよう。