第二章  十二



「鳥居だ! ネットの書き込みは本当だったんだ!」

 黒木が歓喜の声をあげる。他のメンバーも興奮している様だ。


「マジにあったんだね! 神社の心霊スポット!」

 ユキも興奮してワクワクしている。


 美咲は、赤く古い鳥居を見て、自分が見ていた夢を思い出す。

 鳥居の色までは、はっきり分からなかったが、確かに赤い色の鳥居だったかも知れない。

 その鳥居の下に父が居て、手招きをしている姿の夢。

 この先に神社があるのだろうか? 何か父の身に起こった答えがあるのか?と美咲は思っていた。

 それと、先程合った女性の言葉も気になっていたが、だが、ここまで来たのなら······。


 全員は、赤い鳥居を潜り石段を登っていく。

 江古田とアキナは、流石に参道の登りで体力を使ったのか、少し息切れをしている。それほど段数が無い石段を上がって行き、石段を上がり終え境内に入った。


 境内は思いのほか広く地面には砂利が敷かれているが、所々に茶色の土が剥き出しになり雑草も点々と少し生えていた。


 境内の奥には、それ程に大きくない本殿らしき建物が建っていて、周りは木々に囲まれていた。


「ここか······? ここが、邪眼の巫女が住まう神社か······?」

 黒木が境内を進み、一眼レフカメラを構えている。

 杉村と江古田もハンディカムカメラで辺りを撮影しながら砂利と土の上を歩いていた。


「うひゃあ! 何だかワクワクするね」

 ユキが興奮している。


 まだ明るい為か、境内や古いであろう本殿が、そんなに不気味に見えない、と言うより逆に神聖に感じる。


 父は此処に来て除霊をした······? 何かを感じ取って居たのだろうか? 

 美咲はデニムパンツのポケットに手を入れ、少し短い珠数を取り出し珠数を握り境内を見渡す。

 珠数が入っていたポケットには、紫色の御守りも入っていた。

 美咲はユキと一緒に境内を歩き、オカルト研究会のメンバーは各自自由に辺りを調べている。


 江古田がカメラで撮影しながら森山と二人で本殿の裏へと回る。

 黒木が本殿を調べていた。扉には錆び付いている鍵が掛かっている。

 黒木は扉の隙間から本殿の中を覗く。広さはたたみ六畳間程だろうか。

 中には御札が数枚落ちている位だった。他には何も無いが、黒木は本殿の中を写真で撮る。

 今の所、変わった事は起きていない。

 美咲も不安に思っていたのは思い過ごしかと考え始めていたが、どうしても心の中で何か危険信号が発せられている。


 黒木が、江古田と森山が回った本殿の裏へと向かった。

 だが、江古田と森山の姿が無かった。

 黒木が片手で髪をかき上げ、本殿の裏から表へと向かう。

 境内を見渡すが江古田と森山がいない。

 二人の携帯に掛けようとしたが携帯が圏外になっていた。

 黒木は境内の真ん中辺りに向かい立つと

「諸君! 集まってくれたまえ!」

 と、声を発する。


 美咲とユキにアキナと杉村が黒木の元へと集まる。

 

「アレ? 江古田と森山は?」

 杉村が辺りを見回すが二人の姿が無い。

 黒木が

「居ないのだ。本殿の裏に行ったのを見たんだが······二人共居ない、携帯は圏外になっている」


「居ないってどう言う事?」

 アキナが黒木に聞く。

 杉村が

「小便じゃないか? それとも少し木々の奥に行って撮影してるとか?」

「いや······だが······」

 黒木は顎に片手を当て本殿の方を見ている。


 美咲が嫌な感じを覚え始めた。

 境内の雰囲気が、さっきまでとは違って見える。何とも言えない不気味な感じに満ち始めている様だった。

 その時だった、夕暮れの明かりを受けている本殿が、ガタガタと音を出し軋みながら震えている。


「な、何? 地震?」

 ユキが、本殿が震えているのを地震が原因かと思ったが

「いえ、ち、違うわ······周りの木が揺れていない······」

 アキナが冷静に周りを見て言う。

「こ、これは······諸君! お互いに離れるな! 何か奇妙だ!」

 黒木が言うと皆が離れずに集まる。

 黒木、杉村、アキナ、ユキ、そして美咲はガタガタと音を出して震えている本殿を見ていた。

 

 すると、本殿の震えが止まり、鍵が掛かっているはずの本殿の扉が。

 ギギ······ギギ······。

 と音を出し、独りでに開き始める。


「と、扉が勝手に開いている······何故だ! 扉には鍵が掛かっていたはずだ!」

 黒木が驚いている。



 扉が開き、薄暗い本殿の中から、ここの神社のぬしであろう者が姿を、現す······。






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邪眼の巫女 豊島ダイ @D5a78

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