第二章 十一
二人の男女が近くまで歩いてくると、黒木が「どうもどうも、こんにちは」と軽く挨拶をするが、二人は挨拶を返さず。 女性の方が
「あなた達、この先にある神社に行くつもり?」
と声をかけてきた。二十代後半だろうか? 長い髪を後で縛っているが、レディーススーツが山道には不釣り合いだった。
「ええ、そうです。やはりこの先には神社があるんですね?」
黒木が言うと。
「やめた方がいいわよ。神社に行くのは、私達は鳥居の前まで行って引き返してきたわ」
「と言うと、どう言う事でしょうか? 何か危険な事でも?」
黒木が片手で髪をかき上げる。あえて心霊スポットなのか? とは口に出さなかったが。
「ここの神社がパワースポットだと思って来たのかしら? それともネットで噂になってる邪眼の巫女が目当て?」
黒木達と美咲は、ドキリとした。
「や、やはり······邪眼の巫女が······」
目的を言い当てられ言葉が詰まる、黒木
「いや、私は霊感とかないけど······彼がね」
女性が男性に目を移す。
三十代だろうか、髪型はオールバックで背が高く体格が良い、肌が色黒で鋭く圧のある目。只者ではないと言う雰囲気······。
「放っておけ、俺は様子を見に来ただけだ。人助けしろとは言われてない」
男は吐き捨てる様に言った。
「行かせて良いの? あなた『八部衆』の一人でしょ」
「お前は秘書だろ? 余計な事は言うな。俺は金にならない事はしない、そいつらに大金を払うのは無理だろ」
そう言うと男性は黒木達の横を通り過ぎて行った。
「全くあの人は······所で一応は忠告したわよ。あ、そうだ」
女性はポケットから銀色の小さなケースを出すと。その中から名刺を取り出した。
黒木は名刺を受け取る。
「じゃあねえ」
女性は、先に下りていった男性を、小走りで追った。
黒木が名刺を見つめている「八部衆? 何の事だ?」
「何? 何あの男、感じワルッ!」
ユキが、腹を立てている。
「まったくもって! クソヤロウよ! クソヤロウだわ!」
アキナも不機嫌らしい。
「それよか、先に進もう部長」
森山が、名刺を見つめている黒木を急かす。
「あ、ああ、そうだな! さぁ皆で行こう!」
一行が、参道をしばらく進んで行くと、先に、赤い鳥居が見えて来た。
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