悍ましくも美しい満天星の神輿が戦ぎ行く

平成初期、とある片田舎に赴任した若い
警官が妻の死を契機に、古くからこの町を
支配してきた医師一族の悍ましい闇へと
巻き込まれてゆく。
 一方、旧家の絶対君主である医院長の
死によって歪な関係の歯車が狂ってゆく。

横柄な長男と影の薄い母。神社へと嫁いだ
娘と、幼い頃に引き取られた妾腹の次男。
そして妾腹の次男だけが心を通わせてきた
座敷牢から逃亡した『にいさま』とは。

『どうだん様』を祀る神社での、院長の
葬祭の儀から、歪な歯車は加速して行く。

人喰い、死者の黄泉還り、肉親の愛憎、
      そして、神罰。

美しい植物の繁茂と神への礼賛。醜悪で
絶望的な再生の神輿が練り歩く中で。


人は、一体何を目撃するのだろうか。

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