花のをすくに
雨藤フラシ
梗概
粗筋【※結末まで書いてあります、ネタバレ注意!】
昭和43年、幼い
平成4年、成人した慈愛は夜更けの
今日は景克の葬儀だ。
慈愛を家に送った直後に号は金魚を吐いた。それは彼の特異体質がもたらす凶兆だ。号は三年前、祭原の病院で病死した妻の死に不審を覚えていた。
真相を探るため赴任してきた号は、慈愛を取っかかりにすることを目論む。この時を境に、号は植物が人を蝕む悪夢に苦しみ始めた。
不義の子だった慈愛は異母兄の
葬儀の席、慈愛との雑談で、死者を蘇生する反魂樹の話が出る。号が「人を苗床とするか?」と問うと否定され、慈愛は死者蘇生にも嫌悪感を示した。
悪夢に導かれた号は、夜の墓場で慈愛が口の裂けた大男に実父を捧げ、男が死体を貪り尽くす様を目撃してしまう。それは祭原を脱走した怪物・クチナシだった。
昭和46年、彼を兄さまと慕う慈愛は、食べても食べてもひもじがる姿に亡き母を思い出し「自分が死んだら食べて良い」と約束する。
再び平成4年、号に送ってもらった直後に慈愛は帰還したクチナシと再会。「
慈愛は号をクチナシに捧げようとしたが失敗。号が金魚を吐くのは神の加護によるものだった。彼に協力者になってもらえないかと慈愛は考えを改める。
育乃は祭原とも縁深いどうだん稲荷に嫁入りしている。神社を訪れた号は、自分が見た大男の心当たりを尋ねた。
育乃と宮司の
森之進は妻が失踪したと駐在所に押しかけ、クチナシや霊術のことを明かして号に協力を求める。克生は育乃が食い殺されたと仮定し自警団を結成。手がかりを求める号は、慈愛の監視を引き受けた。
祭原には死者蘇生の秘術があり、力の源はどうだんだった。育乃はクチナシの脱走時に命を落とし、承知で結婚した森之進は何度も彼女をよみがえらせている。だが用意したスペアが朽ち、森之進は妻が冥府・花のをすくにへ逝ったと悟った。
育乃が消えて娘の美登里は体調を崩していた。その様子に焦る慈愛。
号はクチナシに捕まり、慈愛と夕食を共にして話を聞く。慈愛は育乃が生ける死者だから葬ったこと、祭原が死者蘇生を求めてどうだんが狂い、クチナシは残った正気の部分、神の化身だと言う。今や秘術も霊術も呪いとなった。号の妻が死んだのは、伴侶にもたらされた金魚の加護が、呪いと反発した結果だとも。
自警団員からクチナシの襲撃を呪文で撃退できたと連絡が入る。効果ありと見た克生は慈愛を捕らえ、クチナシを退治するため動き出した。
号は慈愛にしたように、妻がなぜ死んだのかを問うが克生は答えられず、怒りを見せる様から「誰か殺したのではないか」と見抜く。
作戦が始まると慈愛は自警団員にリンチを受け監禁される。
どうだん稲荷の御神体・
クチナシの体が消え、団員の体から蕾が生える。彼は苗床の黄人草を自らの支配下に置き換え、満天星山で肉体を捨て神に復位した。森之進は事態を予測しながら、克生を陥れるため作戦を進めさせていたのだ。
十六年前、父を憎んでいた克生は慈愛の虐待で憂さを晴らし、死なせてしまう。育乃は異母弟を守れなかった絶望で自殺。克生は二人の死をクチナシになすりつけた。
十日前、憎しみを爆発させた克生は景克を自然死に見せかけ殺害。彼の犯行を疑っていた森之進は慈愛と話し、真実にたどり着いて妻の復讐を決意した。
神クチナシは百鬼夜行を率いて山を降り、神罰で餐原町を血の海に変える。母を連れて逃げようとした克生は森之進に追いつかれた。庇った息子を斬り捨てられ、後を追う母親を見てやはり育乃と親子だな、と森之進は恍惚とする。
神罰は現実世界で土砂災害に書き換えられた。
号は異界で花の苗床になった妻を見つけ、金魚を呑まて解放する。死者の母にならい命を終えようとしていた美登里も、号に救われる。
クチナシは去ったが、慈愛は神棚を作って団子を供え、祈るのだった。
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