この二人でしか成立しない物語

圧倒的な筆力で紡がれる異種族恋愛譚です。
全人類を滅ぼす力を持ったグリフォンと、人類を守るためにグリフォンへと立ち向かった戦姫が、十年に及ぶ殺し合いの末に婚姻を結ぶという衝撃の展開で幕を開けます。

互いに相手を殺せるのは自分だけ、心行くまで殺し合いたい、という執着心のようなものを抱えて婚姻を結んだ二人。
周りに説明しても理解はされないでしょうけれど、だからこそ、二人にしか分からない空気感があって、それぞれ相手を唯一無二だと思っている感覚が伝わってくるのが心地よかったです。
変な既視感も先入観も持たずに入り込める、このキャラたちでしか成立しない物語に仕上がっています。

中編とは思えない満足感でした。
「溺愛」というお題から、この作品を作り上げるセンスに脱帽です。

その他のおすすめレビュー

@kumeharaさんの他のおすすめレビュー140