第10話 作戦会議



【一方】





「どうしたのよ?トイレから電話なんかしてきて」


「なんか振り出しに戻っちゃいましたねー。絶対付き合ってるって思ったけど、分かんなくなってきました。一方的に諸星さんが青山さんを好きなだけなのかな?青山さん、思ったよりも手強いですね、さすが役者だなぁー。諸星さんのことタイプとか、本当に普通に言ってる気もするし、敢えて話題にしてごまかそうとしてるような気もするし……。でもだとしたら相当大した度胸じゃないですか?自分からキスネタ振ってくるとか!」


「何をそんなに躍起になってるのよ。そんなに暴きたい?」


「暴きたい」


「……で、これはなんの時間なわけ?」


「フフ、今ここで待つこと、それこそが作戦です!」


「どうゆうこと……?」


「さっき青山さんの弱点ついといたんで、それの効き待ち中です」


「弱点て?」


「あの子、お酒弱いって思われるの異様に嫌うんですよ。私も昔は多少そんなとこあったから分かるけど、なんなんですかね?あの若い頃特有のナンセンスなプライドって。海賊と考え方一緒で、相手と同じペースでジョッキ空けないと負けだと思ってるんですよね!一生懸命食らいついてこようとして可愛いけど!」


「…………で?」


「で、かなり飲んだから多分今頃キテるはずです。いくら青山さんが役者だって言っても酔ったら演じられないでしょ!シロだとしてもクロだとしても、素が出ちゃうはずです!」


「もしかして、あなたそのために自分の暴露話したの?青山さんの食いつく話して飲ませるために?」


「まぁそれもありますけど、普通になんか突然言いたくなっちゃった!みたいな。幸せって振りまきたくなるじゃないですか!」


「…………」


「とにかく、今私たちがいないから一気に気が緩んで、一気に回ってますよ!もし二人が出来てるなら、二人きりになって我慢きかなくなってますね、若いから。もはや店内とか関係なくキスしちゃってるかも……」


「さすがにそこまではしないでしょ……」


「いや、なくない!何があっても絶対にハメをはずすことのないマネージャーにはそうゆう気持ち、全く分からないでしょうけどね……」


「……私がつまらない女とでも言いたいわけ?」


「そんな誤解ですって!マネージャーはそうゆうところがいいんじゃないですか!いつもシャンとしてて、お上品で。頑なにイメージを壊さない姿勢、心底尊敬してます!」


「……そろそろ戻らなくていいの?さすがに長すぎでしょ」


「二人からしたらむしろ帰って来てほしくない状況かもしれないけど、まぁ時間も時間だし、そろそろ戻りますか!いい感じに酔ってくれてるといいなぁ〜。答え合わせしやすいし!」


「でも結局そんなのどうやって分かるっていうの?いくら怪しいって言っても決定的なところを見なかったら怪しいだけで終わりでしょ?」


「そうなんですよ!いい事言いましたね!だから、最終的にはこの店を出ないと答えは分からないんです。逆を言えば、出れば分かります!」


「……店出たら終わりじゃない」


「終わりじゃない!帰りの道すがら人気ひとけのない公園辺りで、上手いこと二人きりにさせるんですよ!もしそうゆう関係なら、絶対なんかしらするはずです!それを覗き見するっていう……」


「どんな作戦かと思ったら、それじゃただの変態オヤジじゃない!」


「何言ってるんですか!一番手っ取り早いじゃないですか!」


「それにしても、その下世話な探求心はどこか来るのかしら?」


「ごちゃごちゃ言いながらマネージャーだって、その時が来たら絶対一緒に覗くくせに!」


「……。……もう一つ忠告だけど、あなた全体的にあからさますぎ。さっきのああゆうやり口とか……」


「ああゆうって……?あー!マネージャーへのキスのくだりですか?諸星さんなら反応してくれるかなー?って思ったけど、予想以上でしたね!あの子ほんとピュアでおもしろいなー」


「とにかく、ああゆうことするのやめて」


「ただの冗談なのに」


「ああゆう冗談は嫌いなの」


「はいはい」


「『はい』は一回でしょ?」


「はいはい、分かりましたよ!ほら、もう行きますよ!」


「ちょっと!全然分かってないじゃない!!」























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