第4話 上手な嘘を……
「じゃあこれからなのね!」
マネージャーが応援するようなスタンスで、嬉しそうに言ってくれた。
「ねー!ねー!どんな人?」
千堂さんは好奇心がフィーバーしている。
「……そうですね……とにかく笑顔が素敵で……髪はサラサラで肌は白くて……優しくて可愛いらしくて、でもかっこいいところもあって……『美しい』って言葉はこの人の為にあるんじゃないかってゆう……」
えみりちゃんを思い浮かべながらついうっとりと語っていると、
「……おとぎの国の王子様にでも恋した?」
千堂さんが不可解な顔つきで聞いてきた。
「なっ、なんで王子様なんですか!?」
「だって、今の話に当てはまるようなヤツなんて童話の中の王子様くらいでしょ!そんな男、現実にいるかー?」
「そうですよねー?そんな人、俳優さんでもなかなかいないですもん!諸星さん、美化してるんじゃないかなぁ……?」
千堂さんのツッコミにえみりちゃんが謙遜するように同調した。
「いえ!本当にいるんです!!現実の人とは思えないほど素敵な人なんです!!初めて会った時、私だってこんな人実在するんだ!?ってびっくりしたくらいなんですから!!」
私はつい大きな声で反論してしまった。
そのあまりの熱量に驚き、3人の会話がピタッと止まる。
ヤバい…!!またやった……?
あわあわしながら、隣をそーっと見ると、えみりちゃんは頬をほんのり桜色に染めていた。
かっ、かわいい……!!
めちゃくちゃ照れちゃってるーー!!
あー!!
今すぐ抱きしめたいっ!!
私の気が狂い始めそうになったところで、
「諸星さんはその人のこと、本当に好きなのね……」
マネージャーにそう言われ、私は結婚式で牧師さんに誓いをたてるように答えた。
「はい……。好きです……」
自分で言っといて、自分で恥ずかしがっていると、
「じゃあー青山さんは?」
そんな私を早々に放って、千堂さんは好奇心の矛先をえみりちゃんへと向けた。
「……私ですか?」
「うん!青山さんは付き合ってる人とかいるの?」
せっかくマネージャーが綺麗に納めてくれたのに何してくれんじゃい!と、私は心の中で千堂さんをどついた。
「いないですよ」
「好きな人は?」
「いません」
もちろん嘘だって分かってるし、私があんな風に語ってしまった手前、きっとえみりちゃんはそうゆうスタンスの方がいいと思ってそうしたんだって分かる……。
だけど、あまりにもハッキリ淡々と言い切られて、私は一気にずーんと落ちてしまった。
「事務所から恋愛禁止されたりとか?」
まだめげずに千堂さんが突っ込む。
「売れてる人たちはそうゆうのあるみたいですけど、私なんか全然ないですよー。別に禁止なんかされてないけど、普通にいないだけです」
「へー。すっごいモテそうだけどね?」
「正直、言い寄られることはたまに。でも、自分が好きな人じゃなかったら私、絶対死んでも無理なんです」
「若いのにしっかりしてるわね」
マネージャーが誉めた。
私はえみりちゃんの言葉の一つ一つを、箸を止めて真剣に聞いていた。
その時、
バシャッ!!
「あっ!!ゴメンっ!!諸星さん!!」
えみりちゃんが私の服に水をこぼしてしまった。
大した量じゃないし、幸い水だったから私は別に気にしなかった。
「全然大丈夫だよ!」
「だめだよ!染みになっちゃう! 洗いに行こ!」
「え?だってこれって
「すいません!ちょっと洗いに行ってきます!行こ!諸星さん!」
えみりちゃんはマネージャーと千堂さんに断ると、腕を引っ張って私をトイレへと強引に連れて行った。
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