バースデープレゼント
高校を出てすぐの路上で、下校する男子生徒に別の男子が声をかけた。
「タケシ」
「ん?」
「お前、今日、誕生日だろ? これ、プレゼント」
「マジで? あんがと。包み、開けていいか?」
「もちろん」
「何だ、これ。孫の手?」
「ああ」
「なんで? 孫の手?」
「だって、前にお前ん家に遊びにいったとき、お前、長い定規で背中をかいて、孫の手とかないのかって訊いたら、ないって答えただろ」
「だからって、誕生日プレゼントに孫の手って、俺はお前のおじいちゃんかよ」
「ハハハ。馬鹿言うな。お前は俺のおじいちゃんじゃねえよ」
「わかってるよ! 孫の手は孫がおじいちゃんにプレゼントするようなもんだって言ってんだろ」
「あー、だから孫の手は孫の手って名前なのか」
「そんな感じだろうよ。孫が祖父母の背中をかいてあげるためにずっと近くにいるのは無理だから、代わりのもんってなふうな」
「タケシ、わかってたよ。実は、お前はそうやって人にツッコむときが一番輝いてるから、このボケが俺からの本当のプレゼントなんだ」
「何だよ。しょうもねえ」
「というわけだから、その孫の手、返して」
「あー? 駄目だよ。一応もらっとく」
「いやいや、だからプレゼントはボケで、これはうちのだから返せって」
「嫌だ」
「ふざけんな」
「返さねえっから引っ張んなよ」
「返せってー」
彼らを目にした、他の男子生徒たちが話した。
「あいつら、孫の手を引っ張り合って、何してんだ?」
「もうすぐ体育祭だからじゃねえ?」
「ああ、綱引きの練習か。でも、あんなもんでやらなくてもいいのにな」
となりの会話 柿井優嬉 @kakiiyuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます