好みの食べ物
大学の教室にいる男子学生が、同じく男子の友人に声をかけた。
「なあ」
「ん?」
「有名人で、本とかテレビとか、『人生最後の食事で何を食べたい?』みたいな好きな食べ物の話のときに、『豆腐』って答える人がいるんだけど」
「ああ」
「絶対に嘘だろ?」
「え? なんで?」
「豆腐は別にまずくないし、普通に好きなぶんにはおかしかないけど、一番に挙げるようなもんじゃねえだろ。おしゃれを気取ってると思うんだよな」
「豆腐がおしゃれか?」
「そうだよ。欲深くなくて、立派な人間って感じがするじゃんか。時計だったら、『高級なものは欲しくありません。好きな人からもらえるなら百円ショップのでもいいです』みたいなさ」
「ふーん。じゃあ、お前が一番好きな食べ物は何なんだ?」
「俺? 俺はマカロン」
「マ、マカロン? 言うに事欠いて、マカロン? お前のほうがよっぽどおしゃれ気取ってんじゃねえか」
「何しゃべってんだ?」
別の男の仲間がやってきて、二人に言った。
「ああ、好きな食べ物の話。お前は何? 一番好きなの」
「俺はあれ、パンにビーフシチューをつけて食うやつ」
「おい、好きな食べ物を訊かれて答えるものじゃねえだろ、それは。単体のものを言えよ」
「だって、あれが一番好きなんだもん。超うまくない?」
「うまいけどさ」
「お前、俺より面白いことを言うんじゃねえ」
「いや、お前、マカロンってウケ狙いだったのかよ。そうかなと思ったけど」
「そういや、お前だけまだ発表してねえな。何だよ? 一番好きな食いもん」
「俺? 俺は……豆腐だよ」
「お前だってボケてんじゃねえか」
「ボケてねえ。お前のせいで恥ずくなっちまったけど、ほんとに好きなんだよ!」
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