嫁と姑
とある一軒家で、若い女性に、彼女の義理の母親が言った。
「利恵さん。なあに、この棚の上のホコリは。ちゃんと掃除なさってるの?」
「すみません、お義母さま」
「あなたがこの前作った料理、しょっぱ過ぎるわ。亮太が病気になったらどうするおつもり?」
「申し訳ございません」
「ところであなた、なに、さっきから首を気にしているの? 寝違えでもしたの?」
「いえ……実は、昨日の夜に亮太さんとケンカになって、ブルドッギング・ヘッドロックを食らわされたもので」
「ええ? やだ、息子がそんなDV夫だなんて。今は私があなたをいびる場面なのに、話がブレちゃうし」
「大丈夫です、お義母さま。亮太さんはDV夫なんかじゃありません。先に手を出したのは私ですから」
「それにしたって、いくらなんでも妻にブルドッギング・ヘッドロックは」
「本当に問題はございません。亮太さんが、新しく会社に入った女性について話をして、『可愛い、可愛い。俺がもう少し若かったら放っておかないのに』と鼻の下を伸ばすもので、カッとなって何度も顔面にヒップアタックをお見舞いしたゆえですので」
「……だとしてもやっぱり、ブルドッギング・ヘッドロックを妻にはねえ」
「お義母さまはブルドッギング・ヘッドロックのことはご存じなんですね?」
「そりゃあ、ブルドッギング・ヘッドロックをマスターしている息子の実の親ですから。んー、あの子にちょっとお灸をすえなくては。そうだわ、利恵さん——」
一カ月後、女性は夫に姑直伝のキャメルクラッチでギブアップを奪ったのであった。
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