ふられたのに、全体のね、46パーセントが、のろけなんですよ、もう!

もうね、出だしから主人公が「ふられて」いるのです。自分は粗忽者で、人生につきものの選択肢を間違え、その挙句に、ついにふられてしまった、と。

そして、そこからえんえんと後悔し、反省し、悩みます。どれくらい悩むかというと、1920字です。全3178字の、なんと60パーセントが『くよくよ』、後ろ向きなんです。小学生の失敗譚にさかのぼり、高校生になってもうっかり体質は直るどころか筋金が入ってしまった粗忽者。

そんな、両親ですら匙を投げるほどの主人公をずっと支えてくれたのが彼女さん。実は1920字の『くよくよ』のうちの1449字は『のろけ』だったりもします。実に全体の46パーセントが、ですよ。好きだったんですね、彼女のことが。ふられた、のに。

絶望して、のろけて、悔やんで、懐古して。ふられた主人公は動揺しながら家に帰ります。帰宅した彼を待っていたものは……!

鮮やかな語り口と展開が小憎らしいほど心地よい作品です。でも、それに並ぶくらい、粗忽者さんと彼女さんのやり取りが優しくていとおしいです。

いろんな味わい方ができる魅力的な作品です。ぜひ読んでみてください。