学問に犠牲はつきもの
「魔国の花畑と物語の花畑、それらが同一かどうかは不明だ。だが、ガウェイン卿が手にした花の力があれば、きっと賢き冒険者君の助けになるだろう」
「ん、同じものかどうかわからないのにですか?」
「左様。夢に関係する魔法であることは一致しているからな。それに、花畑が呪いや魔法の類であるならば、共通の制約のもとに存在しているはずだ」
「共通の制約?」
「しかり。魔法には必ず根源がある。君の目には魔法はこの世界のあらゆる法則から解き放たれているように見えるだろう。しかし実際はそうではない。魔法は何もないところから現れたりはしない」
「そうか、エーテルか! 魔国の国境にある花畑はバカみたいに広い。あれを維持するには、膨大な量のエーテルが必要なはず……」
「その通り。大規模な魔法を行使するには2つの手段がある。奴隷や生贄からエーテルを収奪するか、
「地脈? 奴隷からエーテルを集める方法は知ってますが……」
「おっと失礼した。君の出自からすると、知らなくても無理はなかったな」
そういってマギーさんはあたりを見回す。
朝と昼の間という微妙な時間帯の宿には、僕らの他に客はいない。
カウンターの奥に座っている店主もいびきをかいて寝ていた。
すると彼女は、近くにあった水差しを傾け、その中身をテーブルに垂す。粗雑なテーブルの上に広がった水は、溝やヒビ割れを通って床にしたたっていった。
「…………!」(わたわた)
「店主さんが寝てるからって……怒られますよ」
「学問の追求に犠牲はつきものだ。さて、地脈はこの星に存在する生命の流れ。水が高きから低きに流れるようにエーテルは大地を流転していく」
「動物や人ではなく、自然にあるエーテルを利用するってことですか?」
「左様。しかし地脈の利用には問題がある。現実の世界に身を置いた存在――言い換えれば、生者はエーテルの流れを利用することが出来ない。何故か分かるかね?」
「うーん……?」
「…………?」(かしげっ)
テーブルの上を広がっていった水は床に落ちている。
水なら地下深くに潜って水脈にたどりつく。それがエーテルなら……?
「生命エネルギーの行き着く場所……あの世?」
「世間的に言えばそうなるな。私たちは
うーん、スピリチュアルな話になってきた。
元の世界だと眉唾どころじゃないけど、魔法のある異世界だしなぁ……。
ゴーストがいて、魔法があるなら、精神世界的なものもありそうだ。
「なんとなく理解できます。精神的な世界だからエーテルの利用が難しい。しかし、肉体を持たないゴーストやエレメンタルはその例外、みたいな感じですか」
「その理解で問題ない。ガウェイン卿が授かった花を用いれば、星幽に干渉することが可能になる。きっと件の花畑を通過する方法が見つかるだろう」
「でもそれ、僕らが一時的に幽霊になるってことじゃ……大丈夫なんですか」
「うむ、学問の追求に犠牲はつきものだ」
「マギーさん、学問のためって言えば何でも許されると思ってません?」
「…………」(こくこく)
「冗談だよ。とはいえ、実際に花を見てみないとなんとも言えないな」
「それもそうですね……。他に手がかりもありません。僕たちはその『鐘鳴りの岬』に行ってみようと思います」
「気をつけたまえ。岬のセイレーンはガウェイン卿でも討ち果たせなかった相手だ」
「そのセイレーンについて、何かわかることはありますか?」
「戦いを挑めば悲惨な結果を招く、という以外にかね?」
「はい。僕がこれまで出会ったモンスターは、みな独自の長所を持っていましたが、同時に欠点もあわせ持っていました。セイレーンもそうなんじゃないかと」
「君らしいな。教科書的に説明するならば、セイレーンは海に
マギーさんはカチカチとクチバシを重ね合わせる。
犠牲者をむさぼり食うってわけか。
「セイレーンの武器は、人々を惑わす魔法の歌声というわけですか。対策は?」
「古来より伝わる伝統的な方法は、歌を聞かないように耳栓をすることだ」
「思ったより簡単ですね」
「然り、簡単過ぎる。おそらくガウェイン卿もそうしたはず。
賢き冒険者君なら、この意味がわかるね?」
「岬のセイレーンには通用しなかった、と」
「左様。船乗りを死の誘惑に誘うのは歌ではない。歌に乗せられたエーテルだ。歌はあくまでもエーテルを乗せる〝台〟にすぎない」
「歌は見せかけ。誘惑を逃れるにはエーテル変調を防がないといけないわけか」
「左様。あるいはゴーレムを使うという手もあるな」
「ゴーレムを?」
「うむ。ゴーレムのような魔法人形は魂を持たない。」
「となると……あ!」
そうだ、ルネさんがいるじゃないか!
彼女はゴーレムだから、セイレーンの歌の効果を受けない。
これなら……行けるかもしれない。
★★★
※作者コメント※
そういえばパーティー(予備枠)にゴーレムいたわ。
完全に忘れてたわね。でも、もう一個、何か忘れてるような…
それにしてもアストラルって聞くと、顔芸の達者な人が住んでる世界っぽい(某遊戯王的な)だが、ZEXALはすでに10年前。うっ頭が…
現代兵器が出せず無能と追放された俺。未来兵器を出して無双する。 ねくろん@カクヨム @nechron_kkym
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。現代兵器が出せず無能と追放された俺。未来兵器を出して無双する。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます