さてさて、肝心要のアンデッドの設定に取り掛かりましょう。
まずアンデッドですが、初稿にあった基本的な設定から。
1.アンデッドは不老不死。脳を破壊されても動作が可能で、修復も可能。
2.アンデッドは強烈な恒常性を持ち、肉体的な成長や生殖ができない。
3.アンデッドの精神・自我が崩壊すると、肉体も崩壊してしまう。(自我が崩壊し、肉体が復帰不能になることがアンデッドの死となる)
4.アンデッドは有機オートマトンであり、マシンであって生物ではない。
5.アンデッドはマシンだが、その思考はアルゴリズムであり、機械のようにプログラムされていない。そのため、人間のような思考の柔軟性がある。
6.高い環境対応性をもつ。放射線や重金属などの汚染物質に対して高い耐性を持ち、人間が立ち入れない汚染環境でも活動が可能。
7.一部の感染症に対して脆弱。自然界に存在するウイルスとコンピューターウイルスに感受性を持ち、それらに感染する。
8.アンデッドの食事は人間とほぼ共通する。だが、肉体の組成が異なることで、必要とする食事が異なる、あるいは不要なアンデッドも存在する。
9.アンデッドの自我は実在する人間を元にしているが、それ以外に物語や歴史書などから自我を再現されたアンデッドも存在する。
こんなところでしょうか。
例示した全てを平等に掘り下げるのは大変なので、一部の設定を掘り下げていって、作中で「足らなかったな~」って部分を足したり「余計だったな~」って部分を消していきましょうか。
●アンデッドは不老不死。脳を破壊されても動作が可能で、修復も可能。
この設定はすべて継続で
アンデッドは全身の神経ネットワークを通じて動作しているので、例え脳を破壊されたとしても、別の部分が代用となることで機能を維持することが可能です。
また、腕や脚を丸ごと欠損したとしても、別のアンデッドから移植することで機能を回復することが可能。サイズ違いも自動的に調律されると言った具合。
ヒーラーが不要で負傷による離脱がない。
アンデッド同士の戦闘で必要とされる火力が大きくなって、戦闘が派手になる。
そういった作劇上のメリットもあるのでこの設定は大事ですね。
●アンデッドは強烈な恒常性を持ち、肉体的な成長や生殖ができない。
アンデッドは人に似ていますが、マシンである以上何らかの要請によって作られた存在、つまり道具です。道具である以上、根本的な変化を防ぐ機構を設けなければなりません。(ハサミが使った次の日にカッターに変化してたら、ちょっと困りますよね?)そのため、アンデッドの遺伝子は任意のタイミングで成長を止めるように作成段階で調整を施されています。
また、アンデッドが不妊なのは、6番目の見出しの環境対応性に関係があります。
遺伝子操作によって、アンデッドの細胞は再生能力を大幅に強化されています。
しかし、この再生能力がアンデッドから生殖能力を奪ってしまいました。
一般的に、生物の細胞は両親由来の2組の染色体(遺伝情報)を持っているため2倍体と呼ばれます。一方、配偶子である精子と卵子は1組の染色体しか持っておらず、1倍体です。受精すると、精子と卵子がそれぞれ一倍体の染色体を出し合うため、受精卵(配偶子)では2倍体に回復します。
アンデッドの遺伝子は生殖細胞の状態を「欠損」とみなして修復してしまいます。これにより、アンデッドは不妊なのです。
(行為自体は可能です。なぜ性差だけ残されたのかについてはお察しください)
アンデッドは生殖不能なので、その数を増やす方法は完全に人工的なものです。
アンデッドの作成方法には、ヒトの遺体かアンデッドの崩壊体を利用する方法と、ゼロから素体を作成する方法の2つがあります。戦前、戦中は遺体を利用することがもっぱらでしたが、戦後は後者になります。
まず前者の方法から解説しましょう。前者の場合、ヒトの遺体、あるいは崩壊体を棺状のデバイスに格納し、パージと呼ばれる工程で遺体がまっさらな状態に「漂白」されます。次にリ・インカネーションと呼ばれる記憶と神経パターンの埋込みが行われます。この工程に使われるデータは、デバイスが対象の遺伝子情報をもとに類推することもあれば、すでに存在するデータを使うことも可能です。
遺伝子情報から類推される自我は、よくいえば人間的、悪く言えばカオスです。
戦後のアンデッドが善人ばかりでなく、犯罪者も存在するのはこのためです。
リスクを背負ってまで、なぜアンデッドはアンデッドを作るのでしょう。
その理由の一つは、廃墟化した地上の再入植と、文明レベルを再生するための労働力の確保のためです。そしてもう一つは、「アンデッドの数は、減ることはあっても増えることは無い」からです。
まず思い出してほしいのは、アンデッドは生殖不能だということです。
つまり、アンデッドの数を増やすには作成するしかありません。
それには崩壊体を再生するか、ヒトの遺体が必要です。
しかし、ヒトの遺体を利用する場合は、腐敗していたり、骨しか残っていない遺体を利用することはできません。
アンデッド達には、今以上に自分たちの数を増やす方法がないのです。
不老不死とはいえ、自分たちの文明はヒトの借り物であり、すでに黄昏にある。
それがアンデッドたちの世界観になっています。
もしヒトが再びこの世界に現れれば…どうなることでしょう?
アガルタの作中世界が滅んだ理由は、明らかにアンデッドにあります。
戦争は変わらないのか、それとも互いに手を取ることができるのでしょうか。
---ここまで---
おやおや……よもやこんなことになるとは
アンデッドの数を増やすことは不可能という設定を追加したことで、より物語が動き出しそうな雰囲気が出てきましたね。
アンデッドの作成には生身の人間が必要。仮にアガルタが生身の人間を再生できるマシン(FalloutのG.E.C.Kの人間専用版のイメージでしょうか)であるなら、廃墟に存在する全ての派閥がアガルタのコントロールを狙う理由が出てきます。
また、派閥同士でアンデッドの誘拐なんかもありそうですね。
それか人探しのクエストで、目標となる人物が誘拐されて作成装置で作り変えられて同じ姿の別人に…みたいなクエストも想像できます。
また、戦前の冷凍睡眠施設が見つかったりしたらと思うと、ゾッとしますね。
設定を固めたことで、初稿よりグッと面白くなりそうな雰囲気が出てきました。
まだまだアンデッドの成れ果てやアガルタについての設定を詰める必要がありますが、それをかくとストーリー自体を追うことになりかねないので、資料メモについては、一旦このあたりで止めておきましょう。
ではでは!!