アガルタの初稿において、自我周りの設定はあまり歴史的な掘り下げがなかったので、そこを補強していこうという試み。
現代の技術では、AIはもとより人間の自我を科学的に観測する方法はないので
ネクロニカの自我次元論をベースに考えてみるとどうなるか…
と、その前に人間や動物の自我がこれまでどのようにして観測されてきたか?
それをおさらいしてみよう。
①鏡テスト
鏡テストは、動物が自分自身を認識できるかどうかを確認するための方法。動物に鏡を見せ、その反応を観察する。例えば、チンパンジーやイルカは鏡に映った自分の姿を認識し、顔に付けられたマークを触ろうとする行動が見られる。
②行動観察
行動観察は、動物の行動を詳細に記録し、自己認識や意識の兆候を探る方法。例えばカラス。カラスは餌を取るために水の入ったりリンダーに石をいれるなどの計画的な行動をしたり、他の動物の視点や電車や自動車の行動を理解しようとする。
③脳科学的アプローチ
脳科学的アプローチでは、脳の活動を測定することで自我や意識の存在を探る方法。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)やEEG(脳波計)を用いて、高度な認識を要する動作を行う人間や動物の脳活動を観察し、特定の脳領域が自己認識に関与しているかを調べる。
④言語的アプローチ
言語的アプローチは人間に対して用いられる方法で、臨床心理学における精神分析のこと。自己認識や意識についての質問に対する回答を分析することで、自我の存在を確認していく。例えば、自己を「私」として認識しているが、私を形成するものには環境や他者と言った自己以外のものが存在する。そうした洞察から、自我の成り立ちや関係性を調べる。
⑤比較認知科学
比較認知科学では、人間とは異なる種の動物の認知能力を比較することで、自我や意識の進化的起源を探る。例えば、アカゲザルやハトを使った実験で、画像の補間能力や自己認識の有無、内省の能力を調べる研究がある。
「ようするに、心に対する研究というものは究極的なアナロジー(類推)なんだよ。自我が類推でしかないモノなら、君の自我の実装が私の思いつきによるモノになるのも、至極妥当ではないかね?」
(2100年代のグループチャットに残存していたネクロマンサーの発言)
彼が言うように脳と心、自我の研究は多くの知見が存在するが、心の研究は究極的にはアナロジーによるものである。論理的に語っていくには、自我なるものが手に取れる実物として存在しないといけない。
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●EoE論(Ego on Eco)
(ネクロニカの自我次元と似通ってますが、実在性の部分でちょっと違います)
2020年にLLM(大規模言語モデル)を用いた生成AIの登場したことにより、各研究機関はこぞって推論エンジンを研究に利用し始めた。これにより、科学研究はかつてないスピードで進んだ。EoE論もその潮流の中で生まれた。
EoE論は、生物の神経ネットワーク(これには脳神経のみならず、体内に共生するレトロウイルスや消化器内に存在する菌類のマイクロバイオームも含む)が現実という複雑で異なる環境に接することで自我が発生するというもの。
EoE論は倉庫の品出しのように解釈できる。
脳神経は記憶や知性に類する「情報」を記録しているが、それ単体ではただの倉庫でしかなく、何も行動を起こすことができない。
しかし、神経ネットワークが外部の環境や他の神経ネットワークと接触すると、それらに対処する要請が生まれ、自身の倉庫に存在する記憶や知性などの「積荷」を外に出荷する。あるいは、外部ネットワークの「積荷」を受け入れることになる。これが継続されることである種の整合性をもった連続的な行動を司る存在が発生、すなわち自我が発生するというものである。
これと同時に、EoE論は自我に実在性を与えた。
EoE論による自我の解釈はブロックチェーンの原理を適用することが可能で、自我の真正性を与えると同時に、自我を実際に存在する物質的なモノにしたのだ。
(外的環境に接触していない自我は不活性化されている。より厳密に言えば現実世界で稼働している存在だけが自我≒本人であり、記録として不活性化された自我は完全な複製とは言えないのだ)
2100年台、このEoE論に基づいてアジア某国で最初の人工自我が作成される。
これは完全な機密プロジェクトであり、全く外部に知られることはなかったが、この最初の成功を契機に「U.N.D.E.A.D」のコンセプトが形作られていくこととなる。
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●技能移植
人間が持つ技能の一部は、脳神経を中心とした行動履歴の選択的積み重ねである。
日本では古くから「手に職を持つ」などと表現していたが、この俚諺(りげん)はある種の真実を含んでいた。
人間に限らず、動物の筋肉の動作は神経ネットワークによって管理されているが、神経は反復された動きに最適化され、より素早く、低コストに動作するように調整されていく。文字通り「手が仕事を覚える」のだ。
これらの神経ネットワークは脳の指示に対応している。
すなわち、〝技能は個人の記憶と密接な関係を持つ〟ということだ。
この関係性が技能移植の難易度を上げていた。自我には記憶による連続性がある。記憶の改ざんを行うと、すぐさま変異が検出されてしまうのだ。
記憶の変異が検出された場合、大体は忘却されるが、最悪の場合は精神崩壊にまで至る。こうしたこともあり、技能移植は極めて困難な行為だった。
この問題を回避するために利用されたのが、人間が睡眠時に見る夢だ。
記憶の改ざんが不可能なら、きちんと体験してもらおうというわけである。
人間が夢を見るメカニズムにおいては、特定の脳波の存在が知られている。
PGO波と呼ばれる脳波は、体全体の運動を連動させたり調整させたりする橋(〝P〟ons)という部分から始まり、外側膝状体(lateral 〝G〟eniculate body)とよばれる部位に送られ、最終的に後頭葉(〝O〟ccipital lobe)に送られる。
技能移植が主に作用するのは、橋と外側膝状体だ。
橋に技能に関係する擬似的な体験を送り込み、外側膝状体でそれを増幅させる。
外側膝状体は、視覚情報を単に中継するだけでなく、情報を修飾したり変調したりすることができる部位だ。(実際、人の目から入った情報は鏡像であり、この部位でひっくり返さないと、人間は常にひっくり返った世界を見ることになる)
外側膝状体の資格情報の変調には空間的、時間的変調も含まれるため、それを利用する。すなわち、他者の人生体験を何倍にもして繰り返し夢の中で体験してもらって体で技能を覚えてもらうというわけだ。
しかし、技能移植は非常に不安定な技術だ。とくに芸術系や軍事面でそれが顕著となる。絵画や彫刻などの技能や兵器の扱いを移植した際には、PTSDや抑うつなど、重大な副作用が発生することが報告されている。
また、成功したとしても虚脱感や浮遊感、頭痛やかゆみ、出所のわからない痛みなどの発生が報告されている。
これら副作用については、時間をかけた移植によって軽減可能である。
だが、危険を承知で短期間での技能移植を試みる者も少なくない。
---ここまで---
なげぇ!
技能移植に関しては、初稿に比べると結構めんどくさくなりましたね。
睡眠が必要になるということは、その場ですぐに技能を手に入れることはできないってことかぁ…。
それに記憶や自我にも悪影響が出るとなると、ガジェットとしては切り札的なものになるかも?
※補足※
技能移植に関しては、外的なデバイスを用いる方法もあるかも。
つまり、銃なり包丁なりカタナなりの道具に記憶・推論機能を与えて脳化してしまう、という方法。(喋る魔剣的な、インテリジェント・ウェポンですね)
特定の道具に縛られる。小さな道具や手榴弾みたいな投げ物には使えない、という別の制約がかかりますが、こっちのアプローチもありかと。
ここまで書いたものは、すでに存在する「U.N.D.E.A.D」の設定とガッチャンコと合体できそうですね。
あと必要な設定は、戦争前と戦争後のアンデッドの作成手順でしょうかね?
アガルタのアンデッドは生殖で増えるんじゃなくて、謎のマシンを使って作られてますが、その資源管理とか人口管理とかどうなっとんじゃいの部分とか、人為的に作られておきながら、レイダー的なやつらがいる理由とか…(わざわざアウトローや幼体のアンデッドを作る理由は?)
後は人間と異なる医学的な部分もですね。アンデッドが蘇生する方法や、損傷から修復する方法、改造する方法なんかの設定をカチコチっと固めていきまっしょい!