[20句選] 羽なき身にて

久保田弥代

羽なき身にて


赤い羽根いくつ刺したら飛べるのか



四方よもの音かほそくなりぬ星月夜



月鈴子げつれいし余韻は未練にも通ず



鳥渡る宿題はしておりません



靴底の枯葉やしかと崩れゆく



師走かな人の命で電車遅延



後ろ髪を切り捨てただけ去年今年



初神籤はつみくじ千手に余る凶如何いかん



空襲忌つぼみは開きたくないと



地虫ず羽なき身にて砂利を這う



北窓を開くたばこの味とが



しあわせのかけらを埋めに鳥帰る



三社祭片隅に泣き暮れるひと



梅雨曇憶えていないわるい夢



青葉風みね吹き越して天の先



蒼天と二分して山笑ひたり



故郷より夜の色濃し寝待月



雨宿りここより立てよ秋の虹



よき枝をはたいて浴びてみる白露



羽あらばいずこへ飛ばん九月尽




                        (終)

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[20句選] 羽なき身にて 久保田弥代 @plummet_846

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