勇者とケイタ エピローグ

 その後、ヒューゴ=ブライトンは救世きゅうせいの旅を続け、魔王の討伐こそ叶わなかったものの、六十六才まで旅をし続け多くの人々を救った。年老いた彼は、幼馴染と戦友の死んだ村に戻る。村は、戻ってきた人たちにより復興されていて、ヒューゴはその村で七十一歳まで墓守はかもりとして、余生を送った。


 畑中圭太はイジメを親に告白し、親は教育委員会を巻き込んで学校と戦った。この件をマスコミが大きく取り上げたことで、ネット上で顔と名前が晒されたイジメ加害者は、転校を余儀なくされた。

 その後、大学に進学した圭太は紛争地帯の国際協力ボランティアとして活動し、戦火で焼け出された人々に温かい食事と安心できる寝床を提供する。そしてボランティア活動中に出会った女性と恋に落ち、結婚した。


 結局、その後の二人が出会うことはなかった。

 あの夜の約束はかなわなかった。

 それでも互いの言葉を支えに、二人は生きた。


 自ら命を断とうとする人間が、最後に救いを求める『いのちの電話』。

 しかし現在、相談員不足で「二十四時間いつかけても、何度かけても繋がりにくい」と苦情が寄せられている……。

 死のうとしている人間に、たったの一言でも声をかけられれば。

 もしかしたら、その死を止めることができるかもしれないのに……。


 これは、そんな現状に心を痛めたとある神が、現世と異世界の『死のうとしている者同士』の声を繋ぐ奇跡の物語である。

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