将軍とヒナタ その3

「ヒィちゃんねえ、おばあちゃんのところにいきたいの」


「なんと、迷子にござるか!? それは大変でござる。祖母殿は、どこにいらっしゃる?」


「おばあちゃんねえ、テンゴクってところにいっちゃったの」


「むっ。そ、それは……ご愁傷しゅうしょうさまでござるな」


「おばあちゃんがテンゴクにいっちゃってから、パパとママはケンカばかりよ。パパもママも、オシゴトでいそがしいから、ヒィちゃん、ずっとおばあちゃんちにあずけられてたの。ほいくえんのおわるジカンに、パパもママもむかえにこれないのよ。ヒィちゃんねえ、パパとママがケンカするの、やなの。だからヒィちゃん、またおばあちゃんのところにいこうとおもったの」


「な、なんと……! ヒナタよ。お主は天国に行くという意味が、わかって言っているのでござるか!?」


「ううん。ヒィちゃん、わかんない。だから、スマホにきいたのよ」


「スマホ……? なんでござるか。それは?」


「スマホはねえ、おばあちゃんのワスレモノなの。ジュウデンしてはなしかけると、なんでもおしえてくれるイイコよ! それでスマホに、『テンゴクへは、どういけばいいですか?』ってきいたの。でも、なかなかおしえてくれなかったの。いろんなききかたしてるうちに、『イノチノデンワにかけますか?』っていわれたの。それで、ハイっていったら、おじちゃんがはなしかけてきたのよ」


 ヒナタは、寂しそうな声で言う。


「おばあちゃん……。『スマホはベンリねえ、ヒィちゃんのスキなものが、いっぱいみれるねえ』っていってたのに。ヒィちゃん、おヒザにのせて、たくさんアニメいっしょにみたのに。わすれていっちゃうなんて、ウッカリさんねぇ!」


 ゴルはしばらく絶句した後で、ヒナタに言い聞かせる


「む、むう……! ヒナタよ、よく聞くがよい。天国へは、今すぐ行ってはならぬ」


「どうして? なんでダメなの。ヒィちゃん、おばあちゃんにあいたいよ」


「お主は、今すぐには、天国には行けぬでござるよ。そこは悪事をせずに精一杯に己の生を生き抜いた者のみが、行ける場所でござる。お主のような年若き子供が、親より先に死ぬるは最大の悪事なり! そのような子供の行く着く先は――」


 言いかけて、気づく。それだと、己の子供も天国に行けてないことになる。

 ゴルは、エホンエホンと咳をする。


「えー……ごほん。つまりでござるな。そのう……えーっと」

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