第1話
寝坊っ! 圧倒的寝坊っ……!
学校指定のネクタイをしめながら、少し早足気味に通学路を歩く。家を出た時間は普段より10分以上遅い。遅刻するほどじゃないけど、もたついてたら十分それもあり得る時刻であることが焦燥感を募らせる。
幸いにも走る必要がある程の大寝坊じゃないだけマシだけど……普段運動なんて体育の授業くらいでしかしない人間は寧ろ早歩きの方が向いてないまであるような気がしてきた。というかもう足痛いし息も上がってきた……これなら少し走ればよかったかもしれない。
兎に角少しは急げ――そう内心息巻いていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、おはよう津木華君!」
「おはよう白露さん……珍しいね。寝坊?」
「う、うん……そのー、目覚ましかけ忘れちゃって」
「そういう日もあるよね……っと、立ち話してる暇はないか」
「そうだね!」
とはいえ遅刻の心配はあまりない。寸前にはなるけど……普通の歩幅でも問題ないだろう。
そう考えていると気が抜けてきたのか、自然と欠伸が零れる。
「もしかして津木華君、寝不足気味?」
「いや、朝にめっちゃ弱いだけ」
どれくらい弱いかというと、登校する一時間前くらいには起きてないと動けないし頭が回り出さないくらい。だからいつもは朝の準備も余裕をもって行ってるんだけど……お恥ずかしいことに、アラームに気付かず爆睡してしまった。
なお何故かこれを言うと意外に思われるけれど、僕は日付が変わる前には寝てる。なので寝不足ということはない筈。まあ寝付きは良くない自覚あるけど。
「そうなんだ……なんか意外だね」
「そう?」
「うん。津木華君って始業ギリギリに来てるイメージがあるから、お家を出る直前まで寝てるのかなって思ってた」
「あはは、よく言われる」
そんなに寝不足に見えるのかね? 自分じゃ分からないけど、そういう雰囲気でもあるのかしら? それ自分じゃどうにも出来ない系の話じゃん……。
「にしても寝坊して登校時間被るなんて凄い偶然もあるもんだねー」
「!? そ、そうだね!」
「……?」
何となく振った話題に、何故か白露さんが慌てた様子を見せた。チャイムが鳴った様子もないし、時間的な余裕こそないけど、このペースで歩けば遅刻はないだろうし……まあ白露さんにも何かがあったんだろう。
「もしかして引き留めちゃった?」
「ううん! そんなことないよ! でもちょっと私先行くね!」
「へーい」
白露さんは走って学校に向かっていく。
うへー、朝から元気だなぁ。
……それにしても、偶然か。自分で言っておいてなんだけど、最近の白露さんとの遭遇率は異常だ。というか平日の朝は殆ど毎日会話してるし。
「偶然にしちゃあ、出来すぎてるよねぇ」
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