好きのまにまに、恋路日和
束白心吏
プロローグ
「おはよう!
通学路に快活な声が響く。
声の方へ顔を向ければ、直視を躊躇わせるほど眩い笑顔を浮かべた少女が、手を振って近づいてきているところだった。
どうにか目をそらさず、ふと浮かんだ「天は二物を与えずとは言うが容姿と声は一括りに与えられるものなのか」という疑問を頭から無理やり追い出し、僕は挨拶を返す。
「おはよう、
「う、うん!」
白露さんは何故かとても嬉しそうに頷き、肩を並べて歩き出す。
「そういえば来週から中間考査だけど、津木華君は大丈夫そう?」
「んー、今回はぼちぼちかなぁ。白露さんはどう……って、聞くまでもないかー」
白露さんは学業においても優秀な成績を修めている。入学式に新入生代表の挨拶をしていたのも彼女だったはずだ。風の噂で全教科満点なんて聞いたことがあったため殆ど言いかけた言葉を呑み込んだけれど、白露さんは「そんなことないよー」と少し照れくさそうに言う。
「そうだ、今日は
「あー、御誘いはうれしいけど、肩身狭くなりそうだから遠慮しとくね」
「そ、それもそうだね……ごめん」
「いいって……あ、でも分からないところあったら聞きに行ってもいい?」
「うん!」
眩い程の笑顔に思わず目を反らす。
半ば日常的になってきているけど、話している間も背筋がむずむずしてたまらない。何せ相手は美人さん。圧があるとか、そういう感じはないけれど、つまるところ天城さんに話しかけられることに未だ慣れそうにないのだ。
だからといって邪険にするようなことでもない。挨拶は対話の基本――そう教わってきた人間としては非常に好ましい姿勢であるし、先のことも純粋な善意での発言だったことに違いはないのだから……思わず拒否した罪悪感で多分果たさない口約束はしたけど。
しかし話しかけられるのは謎だ……彼女の友好関係に明るいわけじゃないけど、近所に住んでる友人だっているだろう。態々交友関係の浅い僕に、登校中だけとはいえ話しかけて来るのは何か裏があるのではと勘繰りたくもなる。毎日となれば尚更に。
まあきっと偶然なんだろうけど。
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