第4話

 普段の道を使えば、十中八九白露さんと遭遇する。遅刻寸前でも早くに出てもそれは同じ。さすがに別の道を通って行った日には会わなかったけど(会ったらホラーである)、こうも会う機会が多いと流石に偶然では片付けられないのではなかろうか。

 それに先日の佐久間さんに絡まれた日……これが別の道を使った日なのだけど、これで一つ確信が持てた。いや、二つか。

 一つは佐久間さんが愉快な人ってこと。

 そしてもう一つは、白露さんが恣意的に登校時間を合わせていること、それに佐久間さん達が関わっている可能性があることだ。確信に近いものを得れたと思ってるけれど、理由は分からん。何かそういうゲームでもしてるのかもね。

 まあ分かったところでって話だし、冷静になってみると、何で僕は今日、普段より一時間前に家を出て、白露さんといつも会う丁字路にいるんだろうって。いや、確信を持ったけど決定的な証拠が欲しいし、正直好奇心を抑えきれなかったっていうのはある。だけどこれって傍から見たら不審者以外の何者でもないじゃん……? ということに気付いたのは張り込み開始から30分くらい、電車通学の生徒が一気に通った後だった。

 なおこちらを見て「津木華が待つ側になったのか」と感慨深く言ってた数名には後で話しを聞こうと思う。その後すぐに疑問符を浮かべてた理由もついでに。クラスも名前も知らないから気分が乗ったらだけど。

 それにしても白露さんは来る気配がない……今日も寝坊だろうか。7月も半ば、朝でも日差しが強い今日のような日は起きやすいと思うんだけど……あ、暑苦しくて寝つきが良くないタイプなのかも。ちょっと納得。

 そんなことを考えていると、いつもこの辺りを通る時刻になった。あんまりギリギリに行くのもアレだし、諦めよう……と歩き出し、丁字路に入ると――


「あ、おはよう津木華君!」


 ――白露さんが挨拶をしてきた。

 すぐに挨拶を返すことは出来なかったが、思わず「何でいるの?」と口に出さなかっただけ褒めてほしい。


「――お、おはよう白露さん」


 確実に声裏返ってた。そんな僕の様子に「? 今日は様子が変だけど大丈夫?」と心配そうに聞いてくる白露さん。誤魔化すように大丈夫を連呼したけど、正直隣に並んでる同級生がめっちゃ怖かったです。

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