第2話 近江朽木谷
〇近江朽木谷・岩神館(義輝仮御所)
◎テロップ 近江・朽木谷 義輝仮御所
将軍義輝、塚原卜伝の高弟を相手に激しい打ち込みをつづける。
義輝、片肌脱ぎ・袴の股立ちを高く取って気合を発し、額から汗が滴り落ちる。
片や、たすきがけの卜伝高弟、涼しい顔で義輝の木刀を受け止め、あるいは躱し、格の違いを見せつけるが、義輝は力まかせの打ち込みをやめず、見かねた卜伝が声をかける。
◎テロップ 塚原卜伝
卜伝「両者それまで。大樹、本日の打ち稽古、これまでといたしましょう」
義輝「まだじゃ。まだまだ。それに、このあと、卜伝どのにも一手、ご教授賜りたい」
卜伝「ふふっ。大樹のその覇気、そのお若さ、この老いぼれ卜伝には眩しい限りにござるが、人の上に立つ将軍たるもの、剣技など所詮余技にしか過ぎぬと心得られませ」
義輝「と、申されると?」
卜伝「天下の征夷大将軍たるや、当然ながら端武者とは違いまする。剣をとって戦うなど、仮にもあってはならぬこと。将軍という地位、さらに将軍家という格式は剣技など必要としませぬ。剣を抜かずして勝つ、戦わずして勝つことこそ王道とお考えあそばされませ。それほど将軍職とは尊いもの、と存じまする」
義輝「なれど解せぬ。剣を抜かずして勝つ、戦わずして勝つとは、いかなることか」
卜伝、いささか遠い目になって、一拍の間を置く。
卜伝「これは、それがしがまだ若い頃、廻国修行にて諸国をめぐっていた折、琵琶湖 を渡る船中で起きたことにございます」
と、前置きして、卜伝は琵琶湖の渡船での出来事を回想し、その船中での出来事を静かな声で語りはじめる。
●つづく
次回は、琵琶湖渡船での出来事に、場面展開
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