第4話 京都・白川口
◎京・白川口 足利義輝の陣
将軍・足利義輝、幔幕内の床几に座す。
義輝の左右に、細川六郎晴元、六角義賢らの臣下をはじめ、塚原卜伝らが居流れる。
遠く近くから敵味方の喊声が聞こえ、時折、鉄砲の一斉射撃音が響く。
そこへ、斥候の兵が現れ「お味方敗退」と注進に及んだ。
義輝「くそっ、三好筑前め」
◎テロップ 六角義賢
義賢「かくなる上は、もはや和議しかございませぬ。和睦交渉により、時間かせぎをして再起を図るが上策かと存じまする」
義輝「ううむ。やむを得まい」
そのとき、卜伝が末席から静かな口調で言上に及ぶ。
卜伝「大樹。今こそ無手勝流の技を、繰り出すときにございます」
義輝「おおっ、例の琵琶湖船中での技でござるな」
六角義賢、怪訝な声で卜伝に問う。
義賢「琵琶湖船中での技? 卜伝どの、無手勝流とは、いかなる技でござろうか」
卜伝「無手勝流とは、剣を抜かずして勝つこと。戦わずして勝つこと。天下の権を握る大樹にしかできぬ技にございます」
義賢「ほう、大樹にしかできぬ技とは?」
卜伝「しれたこと。将軍義輝公の御名により、天下の諸侯に三好を討てと呼びかけるのでございます。反三好の勢力を諸国より糾合し、それをもって東西から挟撃する策をとれば、いかに三好長慶どのとて考えざるを得ますまい。しかるのち、和議を結び、大樹のご威光によって三好どのに臣下の礼を取らせる。これぞ無手勝流。戦わずして勝つ技にございます」
義輝「相わかった。その無手勝流、ここで使うといたそう」
ナレーション「義輝が西国の毛利元就、越後の長尾景虎こと上杉謙信、尾張の織田信長ら諸国の大名に御内書を発給し、三好長慶を討つための上洛を呼びかけた。さらに、本願寺にも一揆をうながした。三好包囲網の形成である。 これを察知した三好長慶のもとに六角義賢がすかさず和議を申し込 む。長慶は堺に兄弟や重臣らを集めて、協議に及んだ。
●つづく
次回は、堺の三好館(海船館)に、場面展開。
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