第6話 京・都大路

 ◎テロップ 永禄三年(1558)12月、洛中


 三好長慶との和議成立により、将軍義輝は二千の軍勢を伴って帰洛し、都大路に駒を進めた。義輝の隣には、側近・細川藤孝が馬首を並べる。

 白馬に騎乗し、緋威しの鎧をまとう義輝の姿が、冬の陽に燦然と輝く。あたかも凱旋将軍のごとき義輝の美しい姿に、沿道に蝟集した群衆がさざめく。


ナレーション「三好長慶と将軍義輝は、六角義賢の仲介により和議を結んだ。これにより、義輝は五年四カ月ぶりに念願の帰洛を果たし、再び天下は鎮まった。永禄元年12月3日のことである」


 義輝、隣で馬首を並べる細川藤孝に話しかける。


義輝「やれやれ、やっと京の都に戻れたわ。なれど、これからが骨の折れることよ。まず、荒れ果てた二条の御所を再建せねばならぬ。わが指揮のもと、正親町天皇の即位式も挙行せねばならぬのう」


藤孝「御意。二条御所の再建を急がせまするが、まずは本覚寺を仮御所といたしましょうぞ。正親町天皇の即位式にかかる費用につきましては、幕府でも用立てることが難しゅうございます。よって、諸国の大名にその費用を負担させてはいかがかと」


義輝「ふむ。いずれの大名が応じるであろうか」


藤孝「さて……まずは書状にてあたりをつけてみることが肝要かと……中でも有望な大名は毛利元就どの。近年、安芸、周防、備後、長門といった国々を手中におさめ、飛ぶ鳥落とす勢いと聞いておりまする」


義輝「毛利とな。うむ、任せる。早々に取りかかるべし」


藤孝「ははっ」


ナレーション「翌永禄二年、将軍義輝の還京を言祝ぐため、尾張の織田信長、美濃の斎藤義龍らが上洛し、二条御所で義輝と対面した。さらに、越後の長尾景虎こと上杉謙信が雪融けの春を待って4月27日に上洛した。その席で、義輝と謙信は物騒きわまる密談をした」


●つづく

次回は京・二条御所に、場面展開。

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