第8話 三好長慶の居城・芥川山城

 ◎テロップ 摂津・芥川山城

  

 芥川山城の書院の間にて、長慶とその腹心である松永久秀が、京都の状況について語り合っている。


ナレーション「正親町天皇は即位こそしたものの、いまだ幕府の財政難のため、即位の式典を挙行できずにいたが、細川藤孝の働きかけが功を奏し、毛利元就がその費用二千貫文を朝廷に献上した。ついに即位式挙行の目途がついたのである。その頃、京の都では、織田信長、斎藤義龍、長尾景虎らの軍であふれていた。この不穏な情勢に対して、いに対応すべきか。三好長慶は、腹心の松永久秀と協議した」


長慶「京には尾張、美濃、越後からの兵が集まっておると聞く。いかほどの軍勢か」

 

久秀「織田どの五百、斎藤どの三千、長尾どの五千で、一万足らずというところでございます」


長慶「ふむ。左様か」


久秀「おそらく義輝公が御内書にて上洛をうながしたのでありましょう。なれど、織田どの、斎藤どのはご機嫌うかがい程度の兵数で、たかがしれておりまする。問題は、五千の兵を率いる長尾景虎どのかと。長尾どのは朝廷に対する尊崇の念強く、大の義輝公びいき。もし、京に長くとどまり、帝の即位式警護を我らとともに務めるなどと申せば、我らにとっては厄介にございまする」


長慶「即位の礼は、幕府侍所たる我らのみでつつがなく執り行うことが肝要。それが、京の都を牛耳る我ら三好党の威勢を、満天下に示すことになろう。したが、御内書に応じて上洛した者を、義輝公の手前、邪魔だと申して追い払うわけにもいかぬ。よき思案はないものか」


久秀「確かに。まして、王城の地たる京の都で争乱を起こせば、帝もご憂慮なされましょう」


長慶「うむ」


久秀「ならば、即位の式典をできるだけ先送りにしましょうぞ。日延べにすれば、長尾どのは、いつまでも京にとどまれぬという国許の事情がございます」


長慶「川中島を争っている信玄公が、相手の虚を衝くと申すか」


久秀「御意。こうしている間も、長尾どのの腰は、内心では浮き加減かと」


長慶「なるほどの。して、いかに即位式を引き延ばす?」


 久秀、長慶に秘策を耳打ちする。

 長慶、深くうなずく。


●つづく。

次回は、河内・高屋城の攻防シーンに、場面展開。

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