一人ひとりに春のうつくしい花が咲きますように。

 どうしようもならないほどの孤独感と春の関係性が切なく胸を揺さぶりました。読者に与えられる余白からは、主人公美春だけでなく、お母さまや他の登場人物の過去を連想してしまいます。一人ひとりがやるせない、鬱々としたものを抱えながら日々を過ごしています。

 母親が残した言葉と行動は、美春の今後の生き方にも大きな影響を及ぼしており、辛く困難な現実をそれでも必死に生きようとしている、微かな希望の春を求めているようにも感じられました。美春の中で絶えないショックと望みが交互に連鎖し、絡み合う隙間でもがいているような印象を抱きます。背負っているものはとても辛いですが、美春がいつの日か、名前のように美しい春を感じてくれる日を願っています。優しさや温もりを誰かを分かち合える、そんな日が訪れますように。

 刹那さま、胸に迫る考えさせられる物語をありがとうございました。たくさんの方に届きますように。

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