第6話

2015年になって来るとアリア大陸最大の国家、中亜人民共和国ちゅうあじんみんきょうわこく(通称:中亜ちゅうあ)の経済が停滞し始めた。

ダンジョン事業にも一部参入し、世界の工場として大躍進を遂げた国家ではあったが、AUSAと不仲となりダンジョン事業から撤退せざる終えなくなったことが原因であると経済の専門家たちは語る。

AUSAとの不仲になった原因の一つは貿易摩擦があり、貿易不均衡をAUSAが中亜に対し解消を求めているが、簡単に行く物ではない。

以前は日ノ本も同じ理由でJ日ノ本パッシングと言う謂れのない関税引上げや不買運動等々の嫌がらせに近い行為を受けた過去がある。

日ノ本製の製品の打ち壊しなどでAUSA市民が盛り上がった映像が国際NEWSで流れたのは何年前の話か。

それは取り合えず横に置いておくが、AUSAは自分たち優先でないと我慢しない国家なのだ。

自分たちが安いから性能が良いから等の理由で大量買いした結果、買い過ぎて通貨流出が多くなれば文句を言う。

逆の立場になればそ知らぬふりして更に物を売り付ける。

それが大国AUSAのやり口だし、貿易収支で最大のマイナスを計上するような国家は味方であろうと関係なく容赦なく責め立てる。

中亜の台頭を後押ししたのもAUSAなのだが、中亜は強かにAUSAの企業の国内進出に色々と牽制し、中でもIT系の企業の進出には特に目を光らせた。

情報統制宜しくNETを自国産で賄い、AUSAのIT侵略を許さなかった。

そんなバックグラウンドもありつつ10年ほどでAUSAと中亜の関係性は今に至る。

中亜も大国である為、現在、AUSAと対立姿勢を少し出し、第二の冷戦が始まると世界固唾を飲み様子を見守っているのが現状であった。

剛〇武(ジ〇イアン)VS熊〇薫(ブ〇ゴリラ)の様相を呈しているが、要は他人の物も俺の物理論の者同士のいがみ合いなのだ。

しかし、未だ中亜の経済は世界の工場としての役割の方で支えられているようだ。

この年、国内での政治の話題で大きく取り上げられたのは安全保障関連法案、通称、安保法では無いだろうか?

国連のPKO平和維持軍の協力を自衛隊もすることで国内、特にダンジョン内の治安維持が疎かになることを懸念され、AUSAの軍隊をダンジョン内に常駐させる事が1つの争点となった。

そして、それに伴いAUSAに日ノ本が武器支援などの協力する等の法整備がなされた。

更に、自衛隊の在り方についての議論が盛んとなり、波及する形で日ノ本国憲法の基本原則の一つ「平和主義」の話にまで事が及んだ。

憲法第9条の憲法改正の議論が持ち上がり、様々な者たちがそれぞれの意見や立場を主張し、「戦争反対」と唱える者たちが改正反対を大声で唱えた。

芸能人等も意見するなどしてこの時、世論の関心事は高まったと言えるだろう。

反対する者たちの意見は「改正すればまた戦争を起こす」「改正すればか大量破壊兵器の保有をする」だ。

使う・やるという不安は勿論あるが、改正賛成派の言いたいのは国家が当たり前の条件を態々縛るのは歪だと言うことだろう。

現在の属国日ノ本がAUSAのご指導と言う名の命令無くして戦争を起こすとはとても思えないし、自分たちで禁止するように仕向けた親分が禁止を解いたのに何を躊躇すると思うが、属国と言う名の平和に飼い慣らされた日ノ本にとって枷を外すのは大冒険に感じるのかもしれない。

その潜在的な不安が保守派の原動力なのかもしれないし、改革派はこのチャンスに少しでも正常な国家を取り戻したいのであろう。

改革派も武器を渡されれば親分に使うように命令されるリスクはどう考えているのか聞きたい所ではあるが、を前提に話すと堂々巡りな為、聞いても詮無き事なのだろう。

お互いに歩み寄りは難しそうだ。

そんな世間の話題などどこ吹く風。

その頃、薙・奈美は基本訓練として元探索者の指導員にしごかれていた。

軍隊もかくやと言う程の激しい訓練で、体力作りとして半日行軍の様な過酷な遠足をしたり、スポーツ選手もかくやと言う様な決められた食事などの小学生にはあり得ない訓練・生活を続けつつ時は流れて行った。


「薙・・・ハァハァハァ」

「何だ?ハァハァハァ」

「半日の間この重りを背負って歩く意味は何だ?」

「ダンジョン内では体力勝負らしいぞ」

「まさにThe肉体労働者!!」

「まぁその通りだけど、疲れている時にモンスターに襲われたら」

「わ、解ってるって、ただの愚痴!!」

「お、おう・・・でも、モンスター倒すと強くなるって話」

「あ~どうだろうな?」

「二式織選手はああ言ったけど、実際どうなんだろうな~」

「解らん!!」

「解らんのか~い!!」

「まぁ無いとは言えんだろうな~」

「その心は?」

「西日ノ下大震災の映像見れば、探索者や元探索者の人たちって強くないか?」

「あ~確かに!!」

「何かあると思うぞ」


「休憩終わり~!!お前ら~行くぞ~」


ダンジョン内では男女の差別なく死は訪れる。

しかし、成長途中の子供たちに無理をさせ過ぎても体を壊すのみだ。

その為、重さは体重別で指定された重さを担ぐ事となる。

ここでは児童虐待と言われてもおかしくない程の過酷な訓練もあるが、将来的に命に係わる事なので文句を言う生徒は誰も居ない。

文句を言えば叩き出されるだけだ。

いや、過去には居た。

それは前例の者たちが居る為、それを知る生徒たちは文句を今更言う者は一人も居ない。

2016年、揉めに揉めたAUSAの軍をダンジョン内に常駐させる法案は可決した。

G民党・公平党・次の世党等が賛成し可決された。

既に沖縄などに駐留していることを突破口に賛成を得ての可決であった。

新鮮民主人民共和国(通称:北新鮮)がミサイル開発を加速させる。

共和国とは名ばかりのウン一族が独裁している国家で、世襲し4代目となる。

この国の最高指導者は労金党総書記を名乗り、現在、AUSAに対立姿勢を示し、仮想敵国の一つとして数えられている。

この国がミサイル開発を止める代わりにダンジョン事業への参入を交換条件として要望しているが、そもそもミサイル開発を止める事は世界平和の為であり、事業参加とは何の関りも無いのであるが、この国では当たり前のことの様にそれを主張し、この国の国内報道でも当たり前のこととされるのであるから価値観の違いと言うものは恐ろしい物である。

この国はダンジョンの情報を得る為に日ノ本人の拉致監禁を行い、この件で日ノ本とも問題を抱えている。

拉致被害を訴える多くの被害者家族が拉致者の返還を希望し、この国との国際問題となっている。

日ノ本政府やAUSA首脳陣もこの拉致被害者の問題については解決の糸口を模索しているが、拉致被害者と偽り入国しダンジョンの情報などを盗む工作員を送り込んでくる懸念もある為、慎重に事を進めているが、解決の糸口はまだまだ見えない。

特亜と呼ばれる国々、など含め隣国は勿論のこと、多くの国々がこのダンジョン利権に絡もうと虎視眈々とその機会を狙っていた。

そんな折、日ノ本のお頭、いや、最大の同盟国たるオールアムリカ合衆国AUSAに激震が走る。

AUSAの実業家として有名なロナウド・ジョー・ドランブーが共同党より出馬しその勢いのままAUSA大統領となる。

元AUSA大統領夫人であるAUSA民民党候補のカーリー・クリキントンが有力視される中、彼女を破り大統領になった彼の選挙時の手腕は脱帽するより無い。

彼は「AUSA至上主義」を掲げ、「AUSAの利にならないことはしない」と公言し、多くの者たちを振り回す結果を作り出すのであるが、訳の分からない人気でAUSA国民を熱狂させた。

ドランブー信者なる者たちが生れる程の国内での人気を誇った。

かつてAUSA大統領で自国の利を最優先に考えない者など一人も居ないと思うのであるが、それを表立って公言するような下品な真似はしなかったからこそインパクトがあったのかもしれないが、それをあえて実行した彼の戦略が優れていたのは間違いない。

彼は利を求める。

日ノ本にあるダンジョン鉱山に利を求めることは火を見るより明かなことなのかもしれない。

他にも、この年、日ノ本人としては見逃せない国連決議があった。

無差別大量破壊兵器禁止条約CAIWOMD(Convention against Indiscriminate Weapons of Mass Destruction)」が議題として扱われ、多くの国がこれに賛同し、締結された。

勿論、これに賛同しないで署名しなかった国々も一部あるにはあるのであるが・・・

時代は大きな転換点を迎えようとしていた。

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