大和ダンジョン国史(仮)

生虎

第1話

この物語の世界はこの私たちの住む世界に限りなく近いが微妙に違う世界だ。

、よく似た世界であって現実世界とは何の関りも無い。

パラレルワールドの一つとでも思ってくれ。

名前が似ていても事象が似通っていようと別世界の話だ!!


時は東歴1939年、第二次世界大戦WWⅡと後に呼ばれる世界規模の大戦争が起こった。

この物語の中心地、この当時は大日ノ本帝国だいひのもとていこくと呼ばれる小国が西洋諸国の内、ゲルマン国、イタリカ国の2ヵ国の帝国主義の国と同盟を結ぶ。

これを三国同盟と呼び、帝国主義の国同士で協力体制を構築した。

そのことを不服に思った諸外国対その三カ国の二陣営に分かれて戦争が起る。

イタリカ国は戦争開始から直ぐにあっけなく降伏、ついで、チナ党のヒドラ総帥率いるゲルマン国も諸外国の軍門に降る。

残された1国、大日ノ本帝国だいひのもとていこくは孤立無援の戦いを強いられ、1945年に直接戦闘を行っていたオールアムリカ合衆国AUSAに敢無く降伏をした。

大日ノ本帝国だいひのもとていこくの国主である時の神皇陛下が「神音放送」で敗戦を全国民に伝えた。

この2国間の戦争を大東亜戦争と後に呼ばれることとなる。

2国間の戦力差は歴然で、国家規模も違う為に一方的な戦いとなり年を跨がずに終戦を迎えると当初は予想されていたが、小国であるはずの大日ノ本帝国だいひのもとていこくの粘りにより戦いは長期化した結果である。

しかし、終戦間近と言うタイミングで大国は大量殺戮破壊兵器とも後に呼ばれる爆弾を2発、この小国に落とし無辜の民を含む多くの犠牲者を増産した。

その爆弾で勝敗が決した訳ではない。

何故に大国はこの様な残虐な行為を行ったのか?

負けていた?いや、圧倒的に勝っていた。

速く戦争を終わらせたかった?いや、敵国は降伏寸前で時間の問題だった。

では何故?・・・答えは人道的に考えるとあり得ない。

大国が全世界に自分たちの力を見せつけたいと言う示威と実証実験を行いたいという何の大義名分も無いエゴの様な理由でその爆弾は使用された。

世界一の大国はここまで傲慢なのであろう。

この世界を牛耳る大国であり、戦勝国で無ければ、この蛮行はジェノサイトとして多くの国々に批判されたのかもしれないが、勝者が歴史を作るとはよく言ったもので、糾弾する国は極僅かであった。

その為、この大国は世界から殆ど非難されることも無く更に敗戦国に無理難題を突き付けて我が物顔でその国を属国とした。

それも形だけは友好国として。

しかし、この時、全人類にとって赦されざるほどの重大な過失をこの大国は犯した。

大日ノ本帝国だいひのもとていこくは小国ながらも独自の文化形成を行い、世界の臍などとも呼ばれる地で、神々の住む島とも呼ばれる場所であった。

何故神々が住むのか?

それはある物を封印する為に神々は集まり封印を施したからであったが、いにしえの出来事の為、人々の記憶にも僅かに残るばかりで、この国以外の諸外国ではただのおとぎ話としか思われていなかった。

ただ、その幾つかある封印の要石を大国の蛮行爆弾投下により1つ壊してしまったのであった。

神皇家に代々伝わる古文書でその事実を知る大日ノ本帝国だいひのもとていこくは事態を重く見て戦勝国のオールアムリカ合衆国AUSAにその事実を伝えたが、勿論、信じてはもらえず情報は封殺された。

しかし、事態は急展開を迎えた。

この島に伝わる日ノ本神話なるものの中の伝承にはその封印は黄泉の国への入り口という記載がある。

そう、黄泉の入り口を封印する為に置かれた要石を爆弾により破壊したことによりその門は一部開かれたのだ。

その黄泉の扉を「黄泉比良坂よみのひらさか」と呼ぶ。

日ノ本の多くの古い古文書にはその名が残っており、入口が開く魑魅魍魎ちみもうりょうが坂を駆けあがって押し寄せ、大地を飲み込み未曽有の大災害を引き起こしたと伝えられる。

また、討伐出来なかった魑魅魍魎の一部は世界各地に散り悪魔や伝説のモンスターとして各地域の伝承にも残ると言う。

UMAはその末裔ではないかともオカルトマニアから囁かれているが事実は定かではない。

当時、大日ノ本帝国だいひのもとていこくの治安維持部隊として派遣されていた連合国軍最高司令官総司令部のオールアムリカ合衆国AUSA所属のマッサーカー元帥がこれを知るが当初はやはり信じずその事実を放置した。

しかし、封印され続けた扉が開いたことで溜まりに溜まっていた魑魅魍魎がその門を駆け上がり大地を埋め尽くすこととなった。

何とか鎮圧するが、一つの都市がそのモンスターの群れに襲われこの地上から消えた。

鎮圧の為に多くの犠牲も出した。

しかし、発表では津波被害で押し流されたと報告されたが・・・知るのは生き残った僅かな者と、両国の首脳陣のみで事態の深刻さ故に緘口令かんこうれいが敷かれて、その事実を広めようとする者は厳しく罰せられた。

幸いにして、神話級の化け物が現れなかったことで何とか鎮圧出来たが、日ノ本の神話に残る八岐大蛇やまたのおろち級の化け物が現れた場合はこの程度の被害で済んだかどうかは定かではない。

この事件を契機に古文書の解読が進む。

古文書にはこの日ノ本は元々はアトラテスと言う神代に存在したという幻の大陸国家の一部だと言う。

そして、この「黄泉比良坂よみのひらさか」を封印する為に国土の大部分を失い、多くの者の犠牲で何とか封印したという。

残された小さな島が現在の大日ノ本帝国だいひのもとていこく、敗戦を機に名を変え、現在、日ノひのもと国と呼ばれる小さな国家なのである。

さて、そのアトラテスと言う国が崩壊した時に現れたのは「黄泉比良坂よみのひらさか」より現れた神話の時代に語られるようなモンスターたちで、現代科学よりも1500年ほど進んだ魔法と科学が融合した超科学技術国家ですらも国土を殆ど失い、封印がやっとだったという。

この伝承で事態を重く見たオールアムリカ合衆国AUSAの首脳部はこの「黄泉比良坂よみのひらさか」の上にコンクリートの山を築き、鉄条網で進入禁止として軍の管理下に置き、一時期は3重4重の防衛網を築いたと言う。

幸いなのは、この時、封印の要石がまだ幾つか残っていたことでこの程度で済んでいたことなのであるが、その事実はまだ誰も知らない。


約50年後

時は東歴2000年を目前に控える中、オールアムリカ合衆国AUSAは過去の軍事資料を一般に公開した。

その中にこれら記述があり、都市伝説の類として世の中の話題に少しだけなる。

AUSAも当事者が居なくなった時代で、日ノ本国も共にこの問題はただのフィクションだと思い、UFOやUMA等と同じ様なゴシップだろうと高を括り、何も確認せず公開に踏み切った。

大日ノ本帝国だいひのもとていこくから敗戦後に名を変えた日ノひのもと国はこの話題で一部持ち切りとなり、自国のことなので念の為と政府による調査が執り行われた。

時の内閣総理大臣、はやし与四郎よしろうが前任の総理急病でこの世を去ったことを受けてその座に就いた時分であった。

この遺跡調査が執り行われるに当って、何故かAUSA協力の下で行われたのはかの国も念の為と思ったのかもしれない。

日ノ本政府の威信を掛けて執り行われた調査にてこの「黄泉比良坂よみのひらさか」は異世界へと繋がるゲートであろうと言うことが確認された。

後にこの場所はと呼ばれる。

世界で唯一の異世界に繋がる門、しかし、ゲームの影響か?それとも入口が洞窟だったことからなのか?「ダンジョン」とそう呼ばれ始め、それが正式名称的に扱われることとなる。

自衛隊やAUSAの軍隊の調査で現在のこの場所には危険が少ないという調査報告と共に、資源が採掘できることが発見された。

特にレアメタルと呼ばれる貴金属が産出され多くの企業参入した。

AUSAとの公共合弁会社が取り纏め企業誘致が活発化する。

しかし、その資源掘削の作業中に謎の一団に作業員が襲われるという事態が発生し、またも自衛隊の調査が開始された。

調査した結果、襲った一団は異形の化け物であることが判明した。

まるでゲームに出て来るゴブリンの様な生物であった事から、そのまま発見者の自衛官が「ゴブリン」と命名し、そのままその名が通例化した。

後に資料で大昔は小餓鬼しょうがきと呼ばれるものだと判明する。

小と言うことは中や大も居るのだろうか?

この段階ではそれらはまだ確認されていなかった。

日ノ本はこのダンジョン問題で世論は大揺れとなる。

そんな問題を打ち消す様に政界に激震が走る。

政界の茶番によりダンジョン問題は一時棚上げとなる。

その茶番劇によりダンジョンのことは人々の記憶の端へと一時的に追いやられる結果となった。

しかし、その中心人物によりダンジョン問題は大きく動くこととなる。

翌年、衆議院議員選挙を経て政権与党のG民党の総裁の座を勝ち取った男がそのまま総理大臣の職に就いた。

名を中泉なかいずみ順次郎じゅんじろうと言う。

「G民党をぶっ壊す!!」をスローガンに国民の圧倒的な支持の基に数々の政策を断行した。

その一つの政策がこの遺跡の更なる調査と自衛隊だけでは持て余した採掘時の作業員の護衛であった。

その仕事を担う為の組織作りを速やかに行ったのであるが、与党の身内からも批判される有様となり、彼は「私の政策を批判する者はすべて抵抗勢力」と言い放ち、解散総選挙に打って出た。

自分に対しての反対者にはその者の同じ選挙区に刺客候補を送るなどして反対意見を潰し、法案を成立させた。

しかし、ここで国民がこの政策に異を唱える声が大きくなった。

強硬手段と言うものは大きな軋轢を生むと言うことであろう。

当初はマスコミも民意も中泉の独断を責めた。 

しかし、中泉総理はこの時責め立てるマスコミを前に大演説を行い伝説を作る。

この時使われたキャッチフレーズは「国民に痛みの伴う改革」だったという。

これは、ある意味では一般市民を希望者ならダンジョンと言う戦地に送り出す様な物であったが、何故か国民はこれを支持した。

そして、中泉なかいずみ順次郎じゅんじろう総理はそれらを行う組織を速やかに立ち上げ整備し、2002年に探索者協会が誕生する。

2004年、探索者の1PTがこの異世界から1冊の学術書らしき物を持ち帰ったことで探索者を目指す者が増え、時はまさにゴールドラッシュの様相を呈する。


「俺は感動した!!」


首相自らあるPTを褒め讃え報奨金を出し、その功績を讃えた。

この言葉は流行語大賞にも選ばれる程で、新聞の一面トップを全てこの言葉で塗り潰した。

しかし、命を懸けた探索で大発見し、今世紀最大とまで言われた物にも関わらず、政府から出された報奨金は100万日ノ本円であった。

これを少ないと捉えるか多いと捉えるかどうかは本人たち次第ではあるが、発見したそれをほぼ無償提供をさせられた上でその金額と考えると、何人が多いと捉えるだろうか?

現に表彰された者たちの顔には不満の色がありありと浮かんでいた。


「命懸けで取って来た物に対して無償提供で、報奨金100万?この国は何時から搾取する国になったんだ?」

「いや、元々搾取酷い国だよ」

「そうだな~その内税率50%超えたりしてな」

「はははは~ありそう!それって「国民は、生かさぬように、殺さぬように」ってやつ?」

「なんだそれ?「国民と胡麻ごまの油は、絞れば絞るほど出るものなり」だよ!!」

「あ~影で彼奴ら政治家・官僚リアルにそれ言ってそうなセリフ!!」

「江戸時代にこれ的な事言った奴は酷過ぎって判断されて幕府もそいつの権限削ったらしいけどな~」

「今は逆に持ち上げそうだよね~」

「まぁ言うのは影で!国民の前では「国民の為に」とか心にもないこと言うんだよね~彼奴らは」

「そうだよね~探索者のことも炭鉱夫かそのガードマン位に思ってんじゃないかしら?」

「それは職業差別だぞ!!」

「そうだね~炭鉱夫さんごめんなさい!!」

「俺たちは炭鉱夫じゃない!洞窟探索のカナリアと同等と思われてるのさ」

「ははははは~カナリアに渡すなら100万もお高い訳だ・・・」


PTの者たちは不満だらけであるようだ。

国は民法241条を適用させないために新しい法整備を行った。


民法241条:埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。


更に、国は文化財に該当しそうな物にも手を打った。

文化財の場合はこの民法241条から除外され、発見者は埋蔵物の所有権を取得することはできない。

代わりに失物法の規定に従って、埋蔵金・埋蔵財の価値の5%~20%に相当する報労金の支払いを受けられることにはなる。

これはダンジョン以外の通常であればの話となる。

このダンジョンを探索させるにあたり、「ダンジョン探索法」と言う新しい法律を国は設定した。

この中でダンジョン内で見つけた物についての項目の一つに下記のような一文がある。

「ダンジョンでの発見は国が全ての所有権を有し、新しい発見がなされた場合一律100万円の報奨金にて発見者を表彰する」と言うものだ。

簡単に言ってしまえば、名誉と100万渡すからそれで諦めろと言うことだ。

この法律が整備された背景にはこのダンジョン内で大発見がなされそれが海外のオークションで500億円相当の額で落札され国内から流出したたことに端を発している。

これを受け早急に「ダンジョン探索法」略して「D探法」を作成し、探索者からの搾取システムを確立した。


「何が「俺は感動した!!」だよ!!あの細目の鬱陶しい長髪が!!本当にXXXXXXXピー(罵詈雑言)政治家め!!」

「まぁ国民人気あるからかな~」

「でもやってることが滅茶苦茶なのに何であんなに支持率あるんだ?」

「演説上手いから?」

「うは~日ノ本史上最悪の詐欺師だなあのジジイ」

「この国の政治家や官僚って一応頭良いんだけどけどね~」

「頭は良いな!自分たちに都合の良い事する時の悪知恵と来たらな~」

「そうだよよね~民営化とか言ってあれって誰得?」

「AUSAとか?」

「はははは~言えてる~属国待遇だしね~国民の不利益なんてゴミ箱のゴミと同等?」

「やってらんね~」


優秀なPTがまた一つダンジョンを去った。

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